はじめに
久しぶりのブログ更新になってしまいました。春学期中は色々slackを使って遠隔授業をどうやって進めていくかということを日々考えながら試行錯誤していたので,それをブログ記事に書くという動機も高かったわけですが,終わったら力尽きたというか,春学期のまとめを書く元気もなかったというのが正直なところです。
さて,私の勤務先では,来週月曜日(9/21)から秋学期授業が始まります。方針として原則対面授業ということになりましたので,久しぶりに教室で授業をすることになります。ところが,大教室で間隔をあけて授業できるというわけでもありません。授業は「試験定員で教室割当」となっていて,それだけを見ると普段より大きい教室が割り当てられそうな感じがします。ただ,実際には例えば机が1つずつ独立していれば収容人数=試験定員という考え方になっています。したがって,47人の教室でも47人以下ならセーフということになります。机が固定されていたり,長机の教室だと,3人がけのところを真ん中1つあけて着席ということになるでしょう。個人的には,屋外なのに客席を3つほどあけてJリーグの試合を観戦しているので,その半分くらいの距離しか空いていない上に屋内で,しかも発声がやむを得ない語学の授業を行うというのは換気を徹底するとはいえ心配です。
春学期のオンライン授業の際にはslackでテキストチャットさせるという手段でそれなりにうまくいっていたのですが,せっかく教室に集まったのにみな無言でテキストチャットさせるのかというと,ちょっとそこまで割り切るのは難しいなと感じています。かといって,「仕方ないよね!」といってコロナ禍前のようにペア・グループでのインタラクションを全面に押し出した授業をするという選択もしづらい。そんな悩みをここ一ヶ月くらい抱えていました。
解決策:春学期の蓄積を活かしてslackの通話機能を使ってみる
「教室で糸電話したらいいんじゃないの?」なんて言ってた同僚の先生もいたのですが,そういう使い回しのものは使用後の消毒が面倒になります。消毒するための費用を大学側が仮に負担してくれたとしても,そこに時間を割きたいとは正直思えません。よって,なにか学生が所有しているものを活かそうという考えになります。スマートフォンですね(注)。
授業内でZoomを使うか,という考えもあるかもしれませんが,zoomの利用は基本的に教員がホストで学生を招待という形がこれまで多かったはずで,学生同士が1対1ないしはグループでの通話を各自で行うというような使い方は導入のコスト(やり方の説明,ルールの統一,トラブル対応等)が大きいことが見込まれます。
そこで,slackの通話機能を使ってみようかなと考えています。要するにスマートフォンでペアの相手と電話するということですね。話すことには代わりないにせよ,向き合って話したり声のボリュームをあげなくても十分に会話できるのではないかと思うからです。
slackの通話機能は,同じワークスペース内のメンバー同士なら自由に通話が可能です。グループ通話は有料版でしかできませんが,教室内でのタスクをペアだけに限定することだけ割り切れば,意外と使えるのではないかと考えています。なぜなら,私の英語の授業では外国語学部の中国語専攻の学生対象の少人数(5人)のクラスを除けば,すべてのクラスでslackのワークスペースを作成してあり,学生がslackの利用に半期の間馴染んできているからです。もちろん,再履修で秋学期から授業に参加する学生も各クラス数名ずついますが,slackへの参加方法や利用法はすでに春学期に資料を作成済みであり,その数名に個別に対応する手間はそこまで大きくありません。
slackの通話機能は,MacやWindows上であればビデオ通話をすることができますが,iOS, Androidなどのスマートフォンでは音声通話しかできません。私はこれも逆にいいかなと思っています。教室で学生が一斉にWiFiに接続してビデオ通話したらキャパオーバーになる可能性は十分にありますし,そもそも教室にいるのだから隣同士で会話することにすれば一応相手を見ることもできます。
操作も簡単で,通話を掛ける側は,DMを送る画面で相手の名前を検索し,見つけたら右上にある電話のマークをタップすれば通話が開始されます(初めて利用する際はマイクへのアクセス許可がでてきます)。通話を受ける側はアプリを起動していなくてもLINEで電話がかかってくるのと同じような通知がくるので,ワンタップで着信を受けることができます。私も実際に利用したことはなかったので,ワークスペースのオーナーアカウントとは別のメールアドレスでワークスペースに入り2つのデバイスを使ってどんな感じになるのか試してみたというところです。
音声通話のみですので,スピーカーホンにしていなければスマホを耳に当てて通話することになります。これのいい点はハウリングを避けられるということです。イヤホンが必須かなと思いましたし,そうするとイヤホン忘れた学生がいた場合にどうしようかということも考えましたが,その心配はなさそうです。
問題点
ぱっと思いついた問題点は,奇数になったらどうするかです。
特にこの話だけに限らないですが,1対1の通話しかできない場合,3人グループが作りにくいという問題があります。普段なら2対1でもとくに問題があるわけではありませんが,できれば1つのスマホで複数人が会話するようなことは避けたいです。なぜなら,物の受け渡しが発生したり,学生同士の距離が近くなるということで感染防止対策の観点で問題があるからです。
では,ということで教師が学生の相手となってこの問題を解消しようということも考えられますが,通常以上にトラブルが発生する可能性が高いので,できればその際にすぐ対応できるように教師はできるだけ教室全体を観察できる状態でいたいと考えます。
スピーカーホンにするとハウリングの問題が出てきてしまいますし,それならもはやわざわざ電話じゃなくていもいいのでは?となりますよね。有料プランもそこまで安いものでもない(一番安いものでも1人につき850/yen per month)ので,このためだけに導入するというのは厳しいです。Microsoft Teamsも勤務先では使えるので,グループ通話が可能なそちらのツールを使うということも考えられます。ただ,私自身がそこまで使い方に習熟していないことと,新しいツールをさらに導入することで学生にかかる負担(アプリのDL等)を考えると,それも躊躇してしまいます。
発想を変えて,ペアの相手がいない学習者は教室を歩き回ってクラスメイトの言語使用を観察し,活動後に全体に対して報告してもらう役目を与えるという解決策もあります(こういうのがどこまで許されるのかはわかりませんが…)。その場にいるとはいえ,電話越しで行われるやりとりを観察するのは割と高度な技だと思うので,これもこの役割になったときにどのようなポイントで観察をするのか,どうやって報告するのかなどのガイドライン等を設けることも必要になってきます。
おわりに
奇数になったらどうするかということを考えるだけで色々なハードルも見えてきました。時間はないですが,とりあえず教室内で全員が通話することがそもそもできるのかということも含めて試してみてからその後の利用も考えようかなと思っています。
通常,電話というのは電話番号なりLINEのアカウントなり,プライベートで使っているものを相手と共有しないといけません。その点,slackはあくまで授業のためのツールで学生も使ってますので,プライバシーに気を使うことなく利用できる点が気に入っています。LINEのオープンチャットもそういう思想だと思いますが,LINEのオープンチャットは通話機能がないんですよね。ということで全員で連絡を共有するツールとしてはできますが,個々人がつながるという点では使えません。悩ましいですね。
最後に,対面でできる授業の工夫としてもっと汎用性の高い情報(それこそ公立学校でもできる工夫)としては,下記のようなものもあります(宣伝)。有料マガジンの一部ですが,興味のある方はぜひ。
注. ちなみに,そもそも私は大学しか想定してませんし,なんなら自分の授業のことしか考えていません。そのうえで,slack使ったらどうかなという記事を書いたら思いの外いろんな方に読んでいただいたのと同じように,どこかの誰かにヒットすればという思いでこの記事を書いてます。公立学校でそんなことできませんとかそういうのはどうかご遠慮ください。

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