内容の負荷が高いときのタスクの作り方

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はじめに

英語(語学)の授業において,タスクを作るときの基本的な考え方として,最近自分の中でしっくりきたことについて書きます。簡単に言うと,タスクの内容的な負荷が高いときは,タスク自体がもたらす負荷を軽減させることによって学習者が取り組みやすいようにするということです。

内容の負荷

内容の負荷とは,ここでは内容の難しさのような意味で使っています。私がもってる授業のうちの1つのクラスで使っている教科書では,数回に一回ほどの割合で,社会的な問題(環境問題等)をテーマとして扱うものが出てきます。こういうテーマは,学生が普段どれだけこういう問題について考えているかということによってかなり左右されるので,例えば旅行とか食事とか,そういう学生にとってより身近だと考えられるテーマよりは英語を使ってやりとりする負荷があがります。こういう内容的に難しい話題を扱おうとするとき,タスク自体がもたらす負荷も高いものだと失敗する確率があがります。

タスクの負荷

では,タスクの負荷とはなんでしょうか。これも本当にいろいろな要因があって,一概にタスクの負荷を決めることはできないのですが,それでもbeginnerレベルでも取り組みやすいタスクとそうでないタスクはあります。例えば,意見を交換して合意形成を求めるような意思決定タスクは決める内容が簡単であったとしても難しいです。自分で意見を考えないといけないうえに,相手を説得するような論理的思考が求められるからです。一方で,情報のギャップがあってその情報のギャップを埋めるようなタスクは,事前にその情報が与えられていて,相手に情報を伝え,そして相手から情報を得ることさえできればいいので負荷は低いということになります。

内容の負荷×タスクの負荷

内容の負荷が高く,なおかつタスクの負荷も高ければ非常に難しいタスクになり(e.g., 少子高齢化問題への解決策を4人グループの中でそれぞれが提案し,最も良い案を1つ選ぶ),内容の負荷が低く,なおかつタスクの負荷が低ければ易しいタスクになります(e.g., すでに与えられた予定を見て,自分のパートナーの相手と遊びに行ける日時を探し出す)。

このことを念頭においておけば,すでに内容が与えられている状態でタスクを構想する際に役に立ちます。つまり,今回の教科書の内容は社会的な問題(内容の負荷が高い)ということであれば,タスクの負荷が低くなるようなタスクを構成すればよいということです。

もちろん,内容の負荷が高いからこそインプットタスクを充実させて,内容的・言語的な負荷が下がるように工夫したり,タスクの条件面で準備時間を増やす等をすることでもきます。そういう方法もありますが,タスク自体の工夫もできますよねというのが今回の記事の趣旨です。

例えば,環境問題をテーマにしたタスクを作ろうとするのであれば,意思決定タスクにするのではなく情報交換型タスク(e.g., 2人または4人等のグループ内で情報を共有し,どの国でどの問題が深刻なのかの表を完成させるとか)を作ることを考えるということです。ちなみに,情報交換は分割数が多くなれば難しくなります。1つの情報を2人で分割してやるより4人がバラバラの情報を持っている方が難しいということです。

おわりに

これまでに私自身がタスクを考えるときは,基本的にまず教科書の内容と相性の良いタスクのタイプを選んでタスクを構想していました。ただ,内容と相性がいいからと言って内容が難しい意思決定タスクを作ると,やっぱり自分の中での手応えがあまり良くないことが多くありました。そういうことを考えていたときに,思い切ってタスクの負荷を下げてみればいいのでは?と思って,普段よりもかなりタスクのゴール達成が容易になるようにタスクを作ったら,意外とむしろそれが程よい難易度で,学生も達成感を味わっているように見えました。

この記事ではタスクのタイプの詳細についてあまり詳しく説明することはしませんでしたが,それも今度出る教材集にタスクタイプごとに豊富な例がありますのでそちらをぜひ御覧ください。

コミュニケーション・タスクのアイデアとマテリアル 教室と世界をつなぐ英語授業のために

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

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