Sato, M., & McDonough, K. (2019). Practice is important but how about its quality? Contextualized practice in the classroom. Studies in Second Language Acquisition. Advance Online Publication. doi:10.1017/S0272263119000159
それから,宣言的知識の影響を調べる分析では5回のセッションのうちの2, 3, 4が合計されて1と5は省くという処置をしたということが書いてあったのですが,”so as to avoid the independence of observation for the inferencial statistics”(p.13)というロジックがよくわかりませんでした。隔週でタスクの内容が異なるので,これやるとそのバランスが崩れてしまうのではと思いました。まあそこに突っ込むとそもそも複数クラスでタスクの順番のカウンターバランスとか取っているわけでもないので,ここで言われている流暢さや正確さの発達が単純に時系列の変動だけによるものとは言えないでしょう。タスクのタイプやそこで扱われたテーマによる変動も含まれているはずです。
Interestingly, the scores of the declarative knowledge test, administered prior to engaging in contextualized practice, did not predict the extent of the practice effect on accuracy or fluency changes. This result indicates that having declarative knowledge of a grammatical structure may not be related to the development of the procedural system of that structure when practice is considered as the cause of the changes. Accordingly, it could be said that contextualized practice alone facilitates a positive change in accuracy, on the one hand. On the other hand, the result seems to challenge skill acquisition theory in that learners may not need an explicit understanding of a grammatical structure to benefit from contextualized practice. However, in the current study, all learners possessed some declarative knowledge of the target structure. Hence, it is premature to argue that practice alone is sufficient to develop procedural memory of a grammatical structure. What the results suggest is, instead, that the amount of declarative knowledge was not related to the extent to which each learner benefited from practice (p.21).
まとめると,Sato and Kim (2019)はタイトルがちょっと煽りすぎでは?と思います。確かに,practiceといっても機械的な口頭産出練習じゃだめだ,もっと文脈依存でコミュニカティブなインタラクションの中での練習でなくては,という主張自体はわかりますし,そのことを文法知識の手続き化という理論的な枠組みを当てはめて研究に落とし込んだのは面白いと思いました。ただ,宣言的な文法知識とはいったい何なのか,そして文法的知識が手続き化するとはどういうことなのか,という部分が分野として確立されたものが提示しづらいところが原因で疑問が色々浮かぶ研究かなというのが個人的な感想です。こういうところに失望して教室SLA研究を「研究」としてやることに対しての意欲を自分は失ったんだなぁと再確認することとなりました。論文を読んでからずっと放置していて公開までに3ヶ月かかってしまいましたが,とりあえず,私がこの論文を読んだ感想はそんなところです。
なにをゆう たむらゆう
おしまい。
注1: Rのrnorm関数を使い,n = 34, m = 59, sd = 25.1として乱数を発生させ,その中で50を下回る人数を数えるというのを10,000回繰り返すと,中央値は12人,最小値は3人,最大値は20人でした。
私は英語ライティングの授業でWord Onlineを使いますが,必ず教員が作ったテンプレートをシェアするようにしています。これにはいくつか理由があって(過去記事の「授業前の準備」のセクション参照),1つ目はフォーマットを統一したいということがあります。口頭や書面でフォーマットに関する指示を出しても,統一できなかったり設定の仕方がわからずにそこで授業の時間を空費してしまいます。それならば,こちらで予めフォントはTimes New Romanで12pt,行間は2行,タイトルは中央寄せ,インデントは1字字下げ,のように設定してしまったものを使わせたほうがあとあと添削入れる際に楽なわけです(テンプレ使わせても勝手に変えてしまう学生もいますけど)。もう1つは,ファイル管理の便利さです。例えば,学生側が新規ファイルを作成し,指定したファイル名をつけて教員とシェアするようにさせるとします。すると,教員側からは,「共有ファイル」という形でシェアされるため,各学生からシェアされた共有ファイルをフォルダでまとめて管理したりすることができません(Google DriveでもOneDriveでもできないと思いますがこの方法をご存知の方がいたらコメント欄でお知らせください)。これができないと,課題ごと,クラスごとにまとまった状態でファイルの閲覧ができないため,非常に不便です。使うのが学期に1度でグループごとのファイルが二桁いくかいかないかというような場合は特に問題ないかもしれませんが。さて,以上の理由から,教員がファイルを作って共有するという前提があるということをご理解いただけたかと思います。しかし,教員がファイルをシェアしようとしたとき,1つのテンプレだけを作って共有してしまうと,それにクラス全員が書き込もうとする状態が発生します。これを回避するには,テンプレファイルをコピーして保存させるか,あるいはあらかじめ学生全員分のテンプレファイルを作っておくかということになります。前者の方法を使うと,コピーしたものを再度教員と共有することになるため避けたいところです(前述の学生から教員にファイルシェアすることによる問題が発生するため)。よって,教員側で学生全員分のテンプレファイルを用意する必要が出てきます。ファイルのコピーを作る方法自体は何も難しくありません。シェルスクリプトやコマンドプロンプトでできる人には朝飯前でしょうし,それができなくてもMacならAutomatorがあります。また,受講生が100人でもCtrl (or command) + Cをたった100回連打するだけで100個のコピーファイルが作れます。しかしながら,単純にファイルをコピーするだけでは,”XXXのコピー1.docx”とか,”XXX(1).docx”のような連番ファイルしか作ることができません。できれば,ファイルに名前をつけてあげたいところですが,すべて手作業でファイル名変更するのは絶対にやりたくありませんよね。じゃあ,といって,学生それぞれに個別にファイルを共有することにしたとします。Aさんには”XXXのコピー1.docx”を共有して,”XXX_A.docx”とするように指示し,Bさんには”XXXのコピー2.docx”を共有して”XXX_B.docx”とするように指示したとします。2人ならいいですが,これを100人にやるなんて考えられませんよね(ライティングで100人なんてありえないと思いますが15人でもやりたくないです)。
Google Classroomの便利さ
Google Classroomを使えば,上記の煩わしさは一切ありません。なぜなら,テンプレファイルを作ってシェアする際に「クラス全員にコピーを作成」というオプションが使えるからです。この設定でDocsのテンプレファイルを課題としてストリームに投稿すれば,個別にコピーを作成してシェアする必要はありませんし,ファイル名も学生の名前のついたものができます。便利ですばらしい。よって,Google Classroomを使っているならDocsを使うべきだと思うわけです。
注2: この方法の一つの問題は,”I ate lunch ,and took a nap.”のようなものが残ってしまうという点です。「半角スペースの直後にピリオドやカンマがあり,その直後に文字列が続く場合には,半角スペースを消して文字列とピリオドやカンマの後に挿入する」のようにすれば解決されます。ただし,関数の入れ子が複雑になる上に単語数カウントには関係ないので今回は無視しています。REGEXREPLACE関数でやるとすれば,次のようなものになるかなと思います。