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どういうスタンスで学会と向き合うか

はじめに

たまたまTLに流れてきた下記のポストについて思ったことを書きます。この投稿をされた方に何か言いたいというよりも,この投稿を見て,学会に参加することとか学会で発表することについて考えたことを書く,というスタンスです。

私はフォローしていない(けど向こうから私はフォローはされている,という方)のポストです。私がフォローしている方が引用ポストされていたので目にしました。

上のポスト中の「外国語教育学会の大会」というのは,外国語教育メディア学会(LET)関西支部2024年度春季研究大会を指しているというのはこの方の下記のポストから明らかです。

率直に思ったこと

まあ,気持ちはわからなくないというか,自分が若い時(博士課程の院生時代とか)には,同じようなことを思っていたとしても不思議じゃないなと思います。学会に参加して,不満を持つということが自分自身なかったことが過去を振り返ってみて一度もなかったわけじゃないので,まあそういうこともあるよね〜というのが率直に思ったことです。

もう少し見方を変えてみる

とはいえ,私は2018年度からLET関西支部の運営委員に入っていて,2022年度からは事務局長をやっています。ということで,まあ「中の人」なわけですね。そういう立場からすると,最初の投稿のような評され方というのは,少し残念な気持ちになりました。ちなみに,私は現在育児休業中のため,事務局長という立場であるにもかかわらず,今回の支部研究大会には参加しませんでした(実際できなかったし,無理して参加しようともしなかった)。というわけで,実際に大会の雰囲気を自分自身がこの目で見て肌で感じて,というわけではありません。

以下,気になった点についていくつか個別に取り上げますが,通底するのは,学会にもっと主体的に参画してほしいな,ということです。学会に参加することはもちろん参加する人にとって利益があることが大前提というか,そういう場所でなければならないのはそうなんです。ただ,参加する人が自分の利益だけを考えて,学会全体として良い大会にしていこうよという主体性がまったくなかったら,それは学界(学会ではなく)としていい方向にはいかないんじゃないかなと思います。学会を運営する側,登壇する側からなにかしら知識だったり情報だったり,そうしたものを提供されることをサービスとして受け取る,そういう受け手の意識だけではなくて,一緒に学会を盛り上げる,そういうスタンスでいる人が増えてくれたら,と私は常々思っています。

気になったこと

最初に示したポストの中で,私が気になったことがいくつかあります。

「誰も質問しない講演」

質問が出ない,というのは,講演の内容の要因(難しすぎて理解されていないとか,逆に質問する隙がなさすぎて質問が出ないとか),聴衆の要因(そもそもちゃんと聞いていないとか,自分の関心領域とは離れていて背景知識に乏しいので質問ができないとか),両者の交互作用,その他にもたくさんの要因が絡まっていると思います。さらに,どの要因で「質問が出ない」という事象が発生するかを事前に予測して対策をすることは難しいでしょう。どういう人が参加するかもわからないし(基本的には会員がほとんどだとしても,会員の興味関心は多種多様です),講演者がどういう講演をどういう流れでするかは,タイトルと要旨レベルでしかわかりません。

また,個人的には誰も質問しない,ということが絶対に悪かどうかというと,そうでもなくて,大事なのはその後に何が起こるのか,だと思っています。講演者の立場の人が,自分のトークのなにかに問題があって議論を喚起できなかったのかと振り返ることも大事ですし,聴衆側は,「質問が出ないということはこの講演って簡単に質問が出るようなものでもないのか」というメッセージが暗に共有されることにもなると思います。いずれにせよ,大事なのは全員が当事者意識を持っているかどうかだと思います。全員が,自分が質問しようと思って聞いているかということですね。このポストをされた方が質問をされたかどうかわからないですけど,もしされていなかったとしたら,この方が指導を受けた先生(と私が思っている人)が日頃口癖のように言ってるように,「自戒を込めて」って付記しないと自分は「外野だ」という認識が現れてしまっているのではと思います。

「最新でもないアプリの紹介」

外国語教育メディア学会(LET)という名前のついた学会だからこそこういうコメントが出てくるのかもしれないし,私は当日の発表を見ていないので本当に何もわからないのですが,最新のツールでなければ発表してはいけないわけではないし,さらに自分にとってそれが既知の情報だったら参加したすべての人にとってもその発表は意味がないのか,っていうとそうとも限らないのではないか,とも思います。また,この方が「自分たちの発表のため」とおっしゃっていますが,その観点でいえば発表すること自体は発表者にとっての利益ともなるわけです。そういう視点にたてば,「最新でもないアプリの紹介」であったとしても,この発表者の方が発表してくれたことに対して,その人にとって発表したことが有益な経験となりうるように関わるのが聴衆としての役割なのではないかなと思います。

「今回の参加は自分達の発表のため」

発表する人のほとんどは,発表するのは自分たちのため(業績づくりのためだったり発表してコメントをもらうためだったり)と思っているとは思います。でも,この視点で臨むことが許容されるとなると,一つ前の,自分にとって得るものがないとも取れるような捉え方をしている発表(「最新でもないアプリの紹介」)も許容しないと矛盾してしまうような気がします。だって,それを聞いてくれる人たちになにかを届けたいと思うのではなく,あくまで自分たちが発表したいと思ってるだけで,発表者の利益しか考えないというわけですから。もちろん実際にはそういう意識でやってるわけではないと思いますし,これは「先輩の発言」であって投稿者がそう思っているというわけではないのでしょうけど(ただ,そういう誰かの発言を引用して「大会としてあれでよかったのか」と揶揄するのは個人的にはうーん,て感じですね)。

今回の大会は結構特殊だった

今回の大会は,Classroom tipsという他の学会ではあまりない発表枠での発表が多く,そのことがもしかすると他の学会の大会のイメージと異なるイベントになった可能性は十分にあるかなと思います。以下関連するポストをいくつか。

おわりに

正直,運営委員だけで学会を「回す」のも結構限界に来てるところあると思っています。発表してくれる人がいるだけでありがたいみたいなところもありますし,そういう人たちをdemotivateするようなスタンスよりは,そういう人たちに発表してよかったと思ってもらえるようにするには,どうしたらいいかを一緒に考えてほしいです。そして,発表してみようかなとか,学会に参加してみようかなと思う人が増えるにはどうしたらいいのか,そして,学会に参加する人たちがもっとメタ的な視点で主体的に「盛り上げよう」と思ってもらえるようにするためにはどうすればいいのか,そういったことをぜひ学会に参加する方々といっしょに考えていきたいと思っています。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

2023年度LET関西支部秋季大会を終えて

はじめに

11月4日(土)に開催された2023年度外国語教育メディア学会(LET)関西支部秋季大会のシンポジウムに登壇したので,その雑感みたいなものを忘れないうちに(その日の夜はほぼ記憶を失いましたが)メモしておきたいと思います。私の資料はウェブに公開しているので,下記から御覧ください。

この資料の中のメインの話は以下の2つの書籍を読めばほとんど書いてあることなので,詳しい話はそちらをお読みください。

特に,私の話は結構端折っているので,本を読んでいただかないとつながりとかも分かりにくくなっていしまっていると今になって反省しています。

第二言語研究の思考法: 認知システムの研究には何が必要か

英語教育のエビデンス: これからの英語教育研究のために

ちなみに,下の本についてるAmazonのレビューは全く参考にならないので,レビューでこき下ろされているからといって買うのを躊躇しないでください(このブログ記事を読む人が私のこの記事の内容とAmazonのレビューで後者を参考にするとは思いたくないですけど)。

全体をざっくり

司会の浦野先生をはじめ,南先生,私と,3人とも言いたいことが結構あったなと思いましたし,それぞれに違うポイントを強調されていたのが(当然ですが)よかったなと思いました。浦野先生は,司会だから抑えめにされていたと思いますが,学会誌の投稿基準の話や追試,外的妥当性・内的妥当性の話など,外国語教育研究の大きなところの中で重要なところをピンポイントに指摘されていた印象です。南先生はとにかく実践研究を広めたい,もっと多くの人に実践研究に取り組んでもらうことで実践も研究も状況が良くなるという信念があるように感じました。

機材のトラブル等があって最後のディスカッションの時間が短くなってしまったことや,オンラインで参加された方に議論を届けられなかったことが非常に残念でした。あと何より私が残念だなと思ったのは,登壇者の南先生がマイクを持って質問者のところに行っていたことです。あれ,南先生がいい人だから自然と身体が動いてそうなりましたし,私も最初マイクを持って走り出そうとして南先生とぶつかりそうになったのですが,あの場にいた実行委員(運営委員を含めても良い)の中の誰もがその役割(シンポジウムを回す役割)を積極的に担おうとしなかったことは,端的に言って登壇者に失礼だったと思います。参加者としてあの場にいたから意識が向かなかったのかもしれませんが,さすがにシンポジウムの登壇者がやることではなかったと思います。そのこともあってか,南先生が議論になかなか加われていませんでした。私も登壇者だったのでなかなか南先生の代わりに誰かとその場で声をあげるほどの頭の余裕がその時はなくて何もできなかったのですが,後から冷静に振り返るととても心苦しかったです(途中から誰かが変わっていたかもしれませんが,記憶がそこはありません)。

フロアとのディスカッションで出た質問

私が覚えている限りの質問について,書いてまとめます。質問された方で私のまとめ方が異なるようでしたらご指摘ください。

実践研究と理論研究が相似系であること

私は探求の論理学の例で,アブダクションによる仮説形成と演繹的推論を用いた予測,そして実験から一般化するというプロセスを提示しましたが,そのプロセス自体は実践研究でも同じことなのではないかということでした(その前にも色々な話があったと思いますが)。それはそういうところもあるかなと思いましたが,アブダクションによる仮説形成時に理論的構成概念を扱うことを重視するという点は理論と実践の違いと言えるかもしれないと思いました。実践の時には構成概念の実在はそこまで重要視されないかなと思うので。

オルタナティブ・アプローチについて(※注)

SLAの話の中にいわゆる認知的「ではない」アプローチをとる研究が一切出てこなかったのですが,というコメントが有りました。私が認知的アプローチを取る研究者を代表して今回登壇したということを浦野先生が補足してくださいました。私がまず答えたのは,社会文化理論なり複雑系理論なり,Atkinson (2011)に収録されているような「オルタナティブ・アプローチ」で言われているように,認知的アプローチでは第二言語習得はわからないのだ,大事なものを捨象しているのだ,というようなものがもし仮に真であったとしても,そのアプローチを取る人たちが,認知的メカニズムを一切仮定しない第二言語習得理論を作ることはできないし,学習者の外側の要因がどれだけ重要であったとしても何からの認知的メカニズムを考えずに第二言語習得を研究することはできないというものです。あらゆる要因をすべて考慮して,全部を包括的に説明することを目指そうとというのは個人的には失敗だと思っています。let all the flowers bloomでは無理だったということを,少なくともメカニズムの探求をするのであればそれを認めた上で(まあ最初からそう思っていた人が多いと思いますが),説明する対象を限定した上でメカニズムの探求をする必要があるだろうというのが「思考法本」の中で書いてあることでもあります。

事例研究の積み重ねの重要性

医学の分野では,厳密なRCT実験ではない事例研究も全く意味がないわけではなく,それはそれで価値のあるものだと認識されているので,事例研究も…というような意見がありました。事例研究の話はこれまた寺沢さんのブログで言及されている話があるので(EBEE本の寺沢さんの5章の最後にも事例研究の話があったと思います),そちらをお読みいただくと良いと思います。

寺沢さんの話は,何を事例として取り上げるのかという選択が非常に重要で,その事例が何らかの形で理論構築なり他者なりに貢献できるような事例でなくては事例研究としての価値が低いということだと理解しています。私はそれ以外にもう一つ医療系と教育系で違う点があると思っています(これは懇親会で亘理先生とも話したことですが)。それは,介入の手順や測定の厳密性や標準化度合いです(これもEBEE本の中でPKテストが扱われる8章で述べられている話でもあります)。医療では,おそらく何らかの介入を行う際に,その手順が厳密に規定されていて,その効果を測る手段も標準化されていると思います。よって,そこのブレがない分だけ事例の共有が容易でしょう。しかしながら,言語教育において何かしらの介入指導の手順がどのくらい厳密に規定されていて,それがどれくらい標準的なものとして共有されているかというと,そこが難しいと思います。「ディクテーション」とか「英作文」とかそういうざっくりしたものは当然のこと,「間違い探しタスク」や「他己紹介」のように多くの人が内容を容易に思い浮かべることができる活動であったとしても,それをどう実施するかには多くの選択肢やバリエーションが存在しています。そして,そのバリエーションが有ることは何ら悪いことではないというか,文脈に即した活動にするためにそのバリエーションが有効に機能します。効果の測定についても,パフォーマンスで評価するにしても正確さ,流暢さ,複雑さを使って言語使用を仮に測定できたとしても,無数の指標からどれを選択するのかについて,合意形成はなされていませんし,あるタスクに固有の標準化されたルーブリックのようなものもないでしょう。これでは,仮に事例研究が多く行われていったとしてもそれを解釈するのは難しいように思います。

ただし,何をやったらどうなったのか,についての主観的な記述を蓄積していくことには意味があると思います。ある実践を行ったとき,その手順についての詳細な記述とそれを実施した教師がどういう主観的な見方をしたのか(うまくいったのか,うまくいかなかったのか),なぜそういう見方をしたのか,というようなものが蓄積されていけば,それはあとから参照する価値の高い資料になると思います。上の寺沢さんのブログでは量的な事例研究もあるので質的なものだけが事例研究だけではないと書いてあって,そこはとても大事な指摘です。量的な事例研究もありますが,教育系で理論に貢献しうる事例研究って結構難しそうだなと個人的には思っています。

おわりに

今回のシンポジウムに登壇することで,自分の考え方もより整理されたなと思います。ただ,発表自体はまだまだで,もっと伝え方を工夫しないとなかなか理解されないということも痛感しました。これは私の力不足です。意見論文をある程度の国際誌に載せるのが簡単じゃないのはよくわかっているのですが,そういうことしないと結局何も変わらないので,たくさんの人と議論を重ねながら,学界がいい方向に進んでいくといいなと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

注(2023年11月8日追記)

オルタナティブ・アプローチの話のところで,質問いただいた方からTwitterで補足・訂正をいただいたので追記します(直接メールももらいました)。

まず,私が質問を理解できていなかったことが原因で噛み合ったやりとりにならなかったこと,お詫び申し上げます。多分聞いてるときにバイアスがめちゃくちゃかかってしまっていたのだと思います。申し訳ございません。

さて,英語教育研究の中にオルタナティブ・アプローチがどう位置づけられるのかという話ですが,オルタナティブ・アプローチが今後何を目指していくのかによるのかなと思いました。認知的メカニズム以外の部分の言語習得のメカニズム的説明を目的としてやっていくのであれば,それはそれで意味があると思うので,やっていったらいいのではと思います。ただし,メカニズム的説明をやるのであれば,私が扱った批判というのはいわゆるオルタナティブ・アプローチの研究にも当てはまることだと思っています。

英語教育研究の中にどう位置づけられるのか,という話だと,「socialな側面を研究するスタディ」がどれだけ英語教育研究の「中で」やられているのかっていうと,ほとんどやられていないのではと個人的には思っています。英語教育学会に入っている人が,そういうところに興味があるのかっていうのもどうなんだろうなと個人的には思っています。だから意味がないということではなくて,だからこそ位置づけるって難しいなと言う話です。合意形成を得るのが難しそうなので。浦野先生が下記のツイート内で補足してくださっているように,”broad SLA research”と考えるとそこにはsocial SLAも入ってくるでしょうね。じゃあその”broad SLA research”と英語教育研究(外国語教育研究)がピッタリ重なるのかっていうとなんかそういう感じはしないな〜と個人的には思います。というのが私の個人的な理解ですね。

また,オルタナティブ・アプローチがメカニズム的説明を求めるのであれば,私の資料でいうと11枚目の浦野先生の作ったスペクトラムの中に英語教育研究を位置づけたものの中には入らないと思います。オルタナティブ・アプローチであったとしても,メカニズム的説明を求めるのであればそれは政策科学ではないからです。もしもオルタナティブ・アプローチがそうではなく意思決定の科学を目指すのであれば,あのスペクトラムの中の真ん中より右側に位置づけられるのかもしれません。

[宣伝] 言語テスト学会(JLTA)第26回全国研究大会でワークショップをやります

はじめに

言語テスト学会の第26回(2023年度)全国研究大会(9/9-10 @ 東北大学)で下記のタイトルでワークショップをやります(私のWSは10日午前です)。

Rを用いた一般化線形混合モデル(GLMM)の分析手法を身につける:言語研究分野の事例をもとに

過去の資料について

資料を準備している中で,私自身が最初にLME関係でウェブに上げた資料がslideshareにあり,それが有料版でないとダウンロードできないことに気づきました。そこで,その資料をそのままspeakerdeckにもアップロードしました。

2014年の資料なのでもう9年前になり,かなり古いですが,全く知らない人にとってはわかりやすいのかなと思います。

その後,2016年には下記のテクニカルレポートを書きました。

田村祐(2016)「外国語教育研究における二値データの分析-ロジスティック回帰を例に-」『外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会2015年度報告論集』29–82. [リンク]

Rでロジスティック回帰をやる方法についてコードとともに解説したものです。このレポートをベースにしたワークショップも2019年に行いました。

田村祐(2019) 「統計ワークショップ」JACET英語語彙・英語辞書・リーディング研究会合同研究会. 早稲田大学. (2019年3月9日)[資料]

そして,2021年にはこれまでに書いたり話したりしたものよりももう少し違う視点からの講演も行いました。

今回の内容

今回のワークショップは,2019年にやったロジスティック回帰がメインですが,もう少し「泥臭く」,実際に出版された次の論文のデータを使って,下処理のところからモデリングのところまでをやる予定です。

Terai, M., Fukuta, J., & Tamura, Y. (2023). Learnability of L2 collocations and L1 influence on L2 collocational representations of Japanese learners of English. International Review of Applied Linguistics in Language Teachinghttps://doi.org/10.1515/iral-2022-0234 

この論文のデータはOSFで公開されているものですので,どなたでもアクセスできます。

Terai, M., Fukuta, J., & Tamura, Y. (2023, June 7). Learnability of L2 Collocations and L1 Influence on L2 Collocational Representations of Japanese Learners of English. https://doi.org/10.17605/OSF.IO/ZQE56

この研究の分析ではカテゴリカル変数は使っていないのですが,カテゴリカル変数も扱いたいなと思ったので,データは Terai et al. (2023)ですが,論文中に行っている分析とは異なる分析をする予定です。

当日使用する資料は下記のページにまとめています(当日ギリギリまで投影資料は微修正すると思います)。

https://github.com/tam07pb915/JLTA_2023_WS

投影資料を直接ウェブでご覧になりたい方は,下記のURLで投影資料をご覧いただけます。

https://tam07pb915.github.io/JLTA_2023_WS/

一応前半は理論編,後半は実践編となっていて,Rのコードをアウトプットに文章の解説を入れています。ごちゃごちゃして見にくいかもしれませんがご容赦ください。

今回のWSは3時間ですが,たぶんそれだけでは消化不良になると思うので,私が過去に公開している他の資料と合わせて読んでいただくと良いのではと思います。

おわりに

統計関係の話は専門家ではないのですが定期的にお声がけいただき,そのたびに勉強し(なおし)ているような気がします。

仙台までお越しになれないという方も,学会ウェブサイトにて動画が後日公開されるようですので,そちらをご覧いただければと思います。また動画が公開されましたらこのブログ記事にも追記します。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

追記(2023年9月13日)

動画が公開されたようです。前後半に分かれています。

11/6に連続公開講座「データサイエンス時代の言語教育」(2)で講演します

2021年11月6日土曜日に,名古屋大学大学院人文学研究科英語教育分野主催の連続公開講座『データサイエンス時代の英語教育』(2)で『一般化線形混合モデルの実践 — 気をつけたい三つのポイント』というタイトルの講演をします。

名古屋大学大学院人文学研究科は私が所属していた研究科ではありませんが,大学院の再編があり私がお世話になった先生方が所属している研究科であり,私の後輩にあたる院生も人文学研究科に所属しています。そういう縁もあってお話をいただきました。私が統計の話をするというのはかなりハードルが高い(統計の専門家ではないですし知識と技術に自信があるわけでも正直ない)と思ったのですが,こういう機会をいただくことでまた自分の知識を更新し,さらにレベルアップする機会にもなると思ったので,お引き受けすることにしました。

フライヤーに要旨も載っていますが,私が名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程に進学した2014年にNagoya.Rというイベントで『一般化線形混合モデル入門の入門』というタイトルで発表をしました。

ちょうど2012年に下記のレビュー論文が出ていて,それをもとにRでどうやってやるかというのをただただ紹介したみたいな感じでした。

Cunnings, I. (2012). An overview of mixed-effects statistical models for second language researchers. Second Language Research, 28(3), 369–382. https://doi.org/10.1177/0267658312443651

一般化線形混合モデルという発表タイトルでしたが,実際は一般化ではなく線形混合モデルのやり方で,私はその後の院生生活で,反応時間を扱う研究ではガンマ分布や逆正規分布,容認性判断のような二値データを扱うデータでは二項分布を使った一般化線形混合モデルを扱うようになっていきました。

7年前はそこまでウェブ上でも特に日本語では資料が多くなかったこともあり,分野を問わず上記のスライドシェアの資料は結構閲覧されていて,D2で学振の申請書を書いたときには「Googleで一般化線形混合モデルというキーワードで検索すると上に来るのは私の資料です」みたいなことを書いたこともありました(笑)

2016年にはおもにロジスティック回帰に焦点をあてたテクニカルレポートを書きました。

田村祐(2016)「外国語教育研究における二値データの分析-ロジスティック回帰を例に-」『外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会2015年度報告論集』29–82. [リンク]

そして,このテクニカルレポートで書いた内容をもとにして2019年には統計のワークショップ講師をしたこともありました。

https://github.com/tam07pb915/JACET-SIG_GLMM-Workshop

そういった流れのなかで,一般化線形混合モデルのレビュー論文のようなものもいくつか新しく出版されているので,そうしたものをまとめた内容にしようと思っています。今回はワークショップではなく「講演」なので,ハンズオンで実際に分析ができるようになるということを目指すわけではなく,(1) 分析の方法,(2) 分析結果の報告,(3) 再現性の確保,という3つの観点から一般化線形混合モデルという分析の手法について話すつもりです。(3)の再現性については,昨今の再現可能性という問題を意識してのものであり,特にこの分析手法だけに当てはまるものではありません。ただ,自分が特に強い関心を持っているのであえて今回の話に盛り込むことにしました。特に,国内の学会紀要などはこういったデータ・マテリアルの公開・共有に関してガイドラインの設定がされていません。このことは今後の研究の発展を大きく阻害すると思いますので,そういったメッセージも入っています(資料はまだアウトライン程度しかできていませんが)。

資料ができたらこの記事の最後に資料へのリンクを追記する予定です。

参加申込は下記のURLから可能で,申込みの締め切りというのは特に設けられていないということです。

https://forms.gle/Ez4GmQC2JpS4j2R49

興味のある方はぜひご参加ください。よろしくお願いします。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。


2021.11.07 追記

当日の資料です。

10/30に関西大学外国語教育学会秋季研究会で講演します

http://kufler-s.jp/?action=common_download_main&upload_id=168

下記の要領で,所属に関係する研究会でオンラインの講演をすることになりました。

関西大学外国語教育学会秋季研究会 2021

■日       時           2021 年 10 月 30 日(土) 13:00~15:50

■会       場           オンライン(Zoom)

■参加費              会員・非会員(無料)

■内       容

12:30~ 受付開始

13:00 開会式

13:10~14:00       タスク・ベースの言語指導とはなにか、どうやって実践するか(理論編)

14:00~14:10       休憩

14:10~15:30       タスク・ベースの言語指導とはなにか、どうやって実践するか(実践編)

15:30~15:40       質疑応答

15:40~ 閉会の挨拶

タスク関係では過去にも何回かセミナーだったりワークショップだったりというのをやったことがありますが,講演という形で単独でやるのは初めてなので今から割と緊張しています。依頼があったときに理論と実践両方ということだったので,その両方をやることになり,結構長めのイベントになっています。実践編の方はワークショップ形式でやるつもりです(自分はあまりワークショップ形式が得意な方ではないですがワークショップ的なことをやってほしいという依頼で受けたのでやります)。要旨は以下のとおりです。

本講演は,タスク・ベースの言語指導(Task-based LanguageTeaching, TBLT)について,それがどういった考え方に基づいているかを理解する理論編と,その理解に基づいて実際の授業を構想する実践編から構成されます。後半の実践編では,まずタスクを活用するという観点から,(a)教科書に掲載されている活動をアレンジしてタスクにする,(b)教室で実際にタスクを使う際に教師に求められるであろうスキルを考える,という 2 つを参加者の方と一緒に考えていきたいと思います。

申し込みは下記のURLから可能で,期間は,2021 年 9 月 30 日(木)10:00~10 月 29 日(金)17:00となっています。

https://forms.gle/M1HCjVa4Az91WFzD6

ご興味のある方はぜひご参加ください。資料も後日このページからアクセスできるようにするつもりです。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。


2021.11.01 追記

当日使用した投影資料をspeakerdeckで公開しました。

J-SLA2020で共同発表します

Photo by Anna Tarazevich on Pexels.com

3月27-28日にオンライン開催される第20回 日本第二言語習得学会 国際年次大会(J-SLA2020)設立20周年記念大会で,共同研究の発表があります。

2020年度の終わりに,2020年度の初めての研究発表ということになりました。プログラム等の詳細は下記の大会のウェブページから閲覧できます。

第20回 日本第二言語習得学会 国際年次大会(J-SLA2020)設立20周年記念大会

発表の形式としては,発表自体はビデオ視聴で,質疑応答はzoomでリアルタイム実施ということになっています。参加するためには年会費の支払いが必要ですので,発表聞いてみようかなという方は会員登録をして頂く必要があります(参加費の徴収はありません)。

J-SLAはクレジットカードでの年会費納入もできます。詳しくは下記のページを御覧ください。2021年3月25日までに年会費を払わないと参加ができないようですので,ご注意ください。

入会・変更・問合わせ

私たちの発表は,27日の一番最終枠(17:10–17:45)で,17:10–17:30がビデオ視聴時間,7:30–17:45が質疑応答の時間となっています。

発表に関する情報は以下のとおりです。名古屋大学の後輩の寺井くんが第一著者の発表です。寺井くんは,彼がB4のときに,私個人あてに名大に進学を考えていると連絡してきたんですよね。それで,入学前に研究計画書を見たり,名古屋に彼が来て当時名大にいた他の院生と一緒に飲みに行ったりしたことがありました。残念ながら,私が関大に就職すると同時に名大の修士課程に入学したので,直接大学院で一緒だったわけではありません。ただ,それ以降も今回の発表メンバーの3人で毎週Skypeでゼミのようなことをやっていて,論文を読んだり,研究のアイデアを練ったりしていました。その中で出てきた研究のアイデアから生まれたのが今回の研究です。

正直言って寺井くんはまだまだ未熟なD生で,今回の研究発表に関してもアブストラクトも何回も修正のやりとりをしましたし,投影資料,発表のビデオについても何時間もかけて3人でやりとりしました。でも,彼は今後の名大を背負っていってほしい人材です(し実際に2022年度には彼が実質一番上になるはず)。学会発表や論文発表もいくつかしていると思いますが,J-SLAみたいな怖い人も結構来る学会での発表はないんじゃないかと思います。そういった意味でもここでしっかり発表をやりきってほしいなと(親心&プレッシャーをかける)。たくさんの方の参加をお待ちしています。よろしくお願いします。

タイトル

Learnability of L2 Collocation and L1 Activation in L2 Collocational Processing

発表者

Masato Terai (Nagoya University), Junya Fukuta (Chuo University), & Yu Tamura (Kansai University)

要旨

In the literature on L2 collocational processing, the influence of L1 activation has been subject to considerable discussion. Using an acceptability judgment task, this study assesses the effect of L1 activation in three different types of collocations: (a) English-only collocations that cannot be directly translated into Japanese (e.g., flat rate-??平らな割合), (b) congruent collocations (e.g., cold tea-冷たいお茶), (c) Japanized collocations (e.g., ??yellow voice-黄色い声援). The results indicated that L1 activation was evident regardless of both the proficiency level and the collocation types. The learners were more likely to accept collocations that they thought were easily translated into Japanese even for English-only collocations. Moreover, even highly-proficient Japanese learners of English did not properly reject the Japanized collocations, suggesting that those items are difficult to acquire without negative evidence that is not available in natural input.

2019SLRFで発表します

実は海外の学会で口頭するの初めてです。そもそも口頭発表自体がだいぶ久しぶりなので結構緊張しています。スライドの細かいところは多分直前までいじるので変更があるかと思いますが,Github上に資料を置いています。

https://github.com/tam07pb915/2019SLRF

前にJSLARFで喋った博論の話なんでJSLARFにいた方は発表会場立入禁止ですが,資料とかもオープンにしてなかったので個人的には今回が初公開っていう感じです(もちろんウェブには博論の要旨が公開されてるんですが)。JSLARFで喋った時は実験2つの話をざっくりしたのですが,今回はそのうちの1つの実験だけについてで,もう少し先行研究とのつながりをメインに話せるかなと思っています。サラミしているというよりは,投稿する論文にするときにうまく1つにコンパクトにまとめるのが難しく,実験1つで1本の投稿論文として出そうと思うにいたったため,1つの実験だけでストーリーになるようにしているつもりです。したがって,博論全体のストーリーとはちょっと違います。

学期開始直前でガンガンメールがくるし帰国までにやらないといけないこともどんどん増えてきているので,発表終わったら引きこもりすることになるかと思いますが,どうかご理解くださいますようお願い申し上げますm(_ _)m

なにをゆう たむらゆう

おしまい。

3/9に東京で統計のワークショップをやります

直前の宣伝になってしまいましたが,きたる2019年3月9日(土)に,JACET英語語彙・英語辞書・リーディング研究会合同研究会にて代打で統計のワークショップ講師を担当することになりました。下記が場所と日時です。

日時:2018年3月9日(土)12:00-17:00(時間は予定)
場所:早稲田大学 11号館 4階 会議室
参加費:500円(予約不要)

下記のリンク先から詳しいプログラムも見れます。

https://sites.google.com/site/jacetlex/

Rを使う予定ですが,Rの操作等についてやっている時間はなさそうなので,基本的にはRを自力で扱うことはできる人が対象になるかと思います。GLMとかGLMMをやってみるというような内容で,基本的には下記のテクニカルレポートで書いたものがベースになります。

田村祐(2016)「外国語教育研究における二値データの分析-ロジスティック回帰を例に-」『外国語教育メディア学会中部支部外国語教育基礎研究部会2015年度報告論集』 29–82.

統計に詳しくない私が講師ですので,末端ユーザーかつ初心者によるワークショップだと思っておいてもらって間違いありません。

当日に使用する資料,Rコードなどは下記のGit Hubにアップロード予定です。

https://github.com/tam07pb915/JACET-SIG_GLMM-Workshop

よろしくお願いします。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

CELES2017英語教育実践セミナー

以前このブログでも紹介させて頂きましたが(https://tam07pb915.wordpress.com/2017/03/28/seminar-celes2017-nagano/),明日6月24日に信州大学で行われる第47回中部地区英語教育学会の英語教育実践セミナー1で,「タスクを用いたスピーキングの指導と評価」と題した発表をさせていただきます。

投影資料についてはまだ細かいところで修正をするかもしれませんが,配布資料を印刷し終えたので,配布資料をGithubページにアップロードしました。

https://github.com/tam07pb915/CELES2017-Seminar

Githubでスライドを公開する方法がいまいちよくわからず,何度か調べたりしながらトライしたのですが結局うまくいかなかったです(github.ioを作ればよいことまではわかったのですが,HTMLファイルはそこで公開できても,Rmarkdownからreveal.jsを経由して作ったHTMLファイルをスライドとして公開するやり方がわかりませんでした…

配布資料は,pdfのものについてはRmdファイルからMS-Wordに出力したあとにPDFにしたものです。Wordファイルにした後で,フォーマットをいじったり一部穴抜きにしたりしてあります。Rmdファイルのものは穴抜きになっていません。

また,当日は私が担当したクラスの学生の発話を音声で流しますが,その部分については公開した資料からは削除してあります。

基本的には,『タスク・ベースの言語指導ーTBLTの理解と実践』で私が担当した部分で書いたタスク・ベースの指導における評価の考え方のような話をする予定です。先月に広島で私が話したこととも一部重複する話も少しだけあります。

この本のこともブログできちんと紹介しなければいけないので(順番が前後してしまいました),書きかけの記事をなるべく早く公開できるようにしたいと思います。

それでは,みなさん,長野でお会いしましょう!

なにをゆう たむらゆう

おしまい。

 

 

英語教育実践セミナー@CELES2017長野大会

2017年6月24-25日に長野県の信州大学で開催される第47回中部地区英語教育学会長野大会の,英語教育実践セミナーでお話させていただく機会をいただきました。この企画は,中部地区英語教育学会長野支部の特別企画だそうで,なんと私の出るセミナーのタイトルは,「スピーキングの指導と評価」です。

ファッ!?いやいやスピーキングの研究とかメインでやってないし評価の研究もメインでやってないよ!?なぜこの話が僕のところに!?

というのがこのお話をいただいた際に思ったことですが,「はい」か「YES」しか選択肢がないのでお引き受けしました。原稿はとっくにあがってるのになかなか校正に入っていない「タスク本」(出版社がとてもお忙しいようです)に書いた内容とも関連させて,タスクを用いたスピーキングの指導と評価についてをお話しようかなと考えているところです。

時間は大会初日24日の10時からということで,ここ数年の中部地区英語教育学会では「恒例」というほどになってきた「英語教育研究法セミナー」の「裏番組」です。参加者として毎年英語教育研究法セミナーに出るのを楽しみにしていたので,そちらに出られないのは残念ですし,昨年度はかなりオーディエンスも多かったセミナーと同じ時間帯ということで,参加いただける方がどれだけいるのかとか不安はあります。そこは実践セミナーの司会を務められる浦野研先生(北海学園大学)にお力添えをいただこうと思います。

私がお話する内容は,「これがいい!」とか「この方法でやればスピーキング力が伸びる!」とかそういったことではなく,「こんな感じでスピーキングの評価を考えてみるってどうですかね?」というような「提案」になると思います(「提案者」としてお話するので)。フロアの皆さんとのやりとりを通して,スピーキングの指導と評価について考えを深められればと思いますので,ぜひ,CELES長野大会にお越しいただければと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。