はじめに
querie.meでいただいた質問への回答です。質問は以下です。
質問
M2の学生です。論文を書く際には、先行研究を読む段階がありますが、その位置づけについて疑問を抱いています。私自身は、関連する先行研究を幅広くレビューし、その流れの中から研究設問や予測(やりたいこと?)を形成していくものだと考えていました。しかし、指導教員からは、「まず自分なりの予測や見通しがあり、それが研究設問として成立するように文献を探してストーリーを組み立てていくものだ」と指導を受けています。一方で、その進め方では、自分の仮説に都合のよい文献だけを選択してしまい、先行研究のレビューが恣意的になってしまうのではないかという疑問を拭えません。例えば、既に十分に行われてきた研究を再生産するだけとか、先行研究で指摘されていることを繰り返すだけになるなど。先生の先行研究のレビューについてのお考えをお聞かせいただければ幸いです。
回答
質問ありがとうございます。最近質問来ないなと思っていたので,シンプルに嬉しいです。
分野が違うとまた研究の進め方に対する考え方も違うかもしれないですし,同じ分野でも考え方も違うかもしれないので,あくまで私の考え方では,ということを最初にお断りして書きますね。
基本的に質問者の方と同じような考えを持っています。「自分なりの予測や見通し」はどこから出てくるのか?と考えると,それがなんとなくの自分の直感じゃなくて,先行研究の結果とか,あるいは何らかの理論や仮説から導出されるはずなんですよね。なんとなく私はこうだと思うんですけど,では研究になりませんから。となると,やっぱり,まずは文献を読むのが最初に来るべきでしょう。実際に今いる学部とMのゼミ生を指導する際にも,文献を読むところからスタートしてもらってます。もちろん,「どこから読み始めるか」を決めるのは自分の興味や関心がないとどこから手を付けていいのかわからないということになるので,興味や関心が不要だとも思っていません。
例えば,今のB4のゼミ生は,「集合名詞」に関心を持っています。なんで集合名詞なの?というと,それが数の一致の揺らぎと関係しているからなんですね。The government is/are…みたいな。そこからスタートすると,集合名詞に限らず,数の一致という現象を扱った研究論文を読むことになりますし,それらがどういう理論的基盤で行われているのか,みたいな論文も読みますし,数の一致という現象の記述的な言語学の論文を読むことにもなりますよね。こうやってどんどん論文を読んでいくなかで,今までどういうことがやられていて,やられていないのか,ということを考えていきます。
でも,ただ,「先行研究でやられていないから」は研究の動機としては弱いです。これはたぶん過去にブログで書いたこともあると思うんですが,「やる価値がないから先行研究でやられていない」という可能性もあるからです。つまり,先行研究でやられていない,というだけではなくて,そのやられていないことをやることにどのような価値があるのか,ということを論じることができなければ,それを研究課題にすることはできないんですよね。で,それはどっから出てくるのか?っていうと,自分の予測とか見通しとかじゃなくて,研究領域がどこを目指しているのかという理解と,その営みのどこに貢献しうるのかという理解,これが必要ですよね?その理解は何から生まれるの?って考えたらそれはやっぱり先行研究を読むこと,そしてそれを体系的に整理できること,だと思います。そのために先行研究のレビューをする,というように私は考えているし,実際にそう指導しているつもりです。
おわりに
M2ということは,修論に本腰入れて書き始めるような段階なのかなと思います。頑張ってください。また悩んだことがあれば相談お待ちしています。
私に質問したい方は下記URLからどうぞ。
https://querie.me/user/tam07pb915
なにをゆう たむらゆう。
おしまい。
