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Yu Tamura について

第二言語習得の研究者。博士(学術)。英語教育のことや統計・データ分析に関わること、趣味のサッカーのことなどについて書いています。

Wordで作った問題を1問ずつに分割してPDF化する

はじめに

ここ数年,絶対にやらなくちゃいけないわけではないけれども,できたらいいなと思っていて,でもめんどくさくて挫折していたのがタイトルの作業です(実際にはもとはPDFで,それをWordファイルにして扱いやすいフォーマットにしてから…という話なんですが)。PDFで持っている文法の練習問題があって,それをLMSで教材にすると,PDFを1枚貼り付けて,それを別画面で開いてそれを見ながら回答の入力はLMS上で行う,という運用になるわけです。ただ,学生側からすると問題入力する画面で問題も見せてくれよとなりますよね。それをどうにかしないとなぁとずっと思っていたのですが,めんどくさくて放置していて,生成AI(ChatGPT 4o or Claude 3.5)に助けを求めたりもしたのですがうまくいかず,今日「はっ!もしかして!」と今までと違うアプローチを試みたらうまくいったので,その嬉しさのあまりこの記事を書いています。人によっては,そんなこと最初から思いつけよと思うかもしれません。

なぜめんどくさいのか

普通の空欄補充問題とかなら,たぶん生成AIに渡して問題ごとにWordで出力してとか,あるいは選択肢もカラムで整理してcsv形式にしてLMSにそのまま流せるようにとか多分できるんですよ。でも,その文法問題は,空欄補充以外にも下線部のエラー特定問題も含まれています。下記画像のような感じです。

こういうのは,下線の下のアルファベット記号のレイアウトが肝なのでテキスト処理的にはうまく扱えないんですよね。それで,生成AIに頼んでもうまくいかないと。

私がどういうことをやりたいと生成AIに伝えていたかというと,PDFを見せて,これを問題ごとに分割して別のファイルにしたいんだということでした。どうしても下線部問題のレイアウトが崩れてしまったんですよね。それから,画像ファイルとしてLMSに上げることも考えました。画面のスクショを撮るなら正直1問数秒で終わりますから,数十問あってもそこまで時間はかかりませんし,ファイル名を連番に変えるというような作業は機械的にできるので。しかしながら,画像として問題をLMSにあげると,画質が悪くて問題が見づらいという問題にぶちあたってしまいました。これに悩んでいたときはo1のような推論モデルもなく,推論モデルにPDFファイルやWordファイルを見せることもできませんでした。もしかすると,その方法なら(私が思いついたのとは違う)良い解決策を提案できたかもしれません。

解決の糸口

ふと,Claude 3.7 sonnetにWordあるいはPDFでどっちならどうにかできるかと今日相談してみました。すると,WordでVBAを使えばできると言ってきました。なるほどその手があったか!と思いました。私は,Adobe AcrobatでPDFからWordに変換し(レイアウト崩れはゼロに近いクオリティ),VBAは使えないので,提案されたコードをただ貼り付けて,スクリプトを実行しました。すると,数十個のWordファイルが生成されました!あとは,Adobe Acrobatでこれを一括で読み込んでPDFにすればいいだけです(WordのままLMSに読み込ませるとレイアウト崩れがあるため)。ところが,出力されたファイルはやっぱり下線部問題でレイアウト崩れがありました。問題部分を抽出して,コピペするというやり方でしたが,新しいファイルを開いてコピペする際に,元のレイアウトを保持してコピペするというのがなかなか難しいようでした。

そのとき,私はひらめいたのです。

これもしかして,問題を分割することとファイルを分けることを一緒にやろうとしていたから難儀な作業になっていただけで,空行をページ区切りに置換して1ページ1問のWordファイルにすれば,あとはそのままPDF化してそのPDFを1ページごとに別個のPDFファイルに出力するだけいいのでは?

と!いやむしろなんで最初からそういう発想になってなかったのよメチャクチャ簡単やん!となりました。そこで,ClaudeにWordで空行をページ区切りに変換する方法を尋ねると…

  • 検索と置換機能(Ctrl+H)を使用
  • 検索欄で「^p^p」(2つの段落記号)を入力
  • 置換欄で「^m」(手動改ページ記号)を入力
  • 「すべて置換」をクリック

というサジェストがありました。あとはこの通りに置換して,1問が1ページになっていることを確認したらPDF化して,Adobe Acrobatの”organize pages”で1pageずつにsplitすれば,1問1PDFファイルの完成です。あとはLMSの仕様に従ってzipファイルにまとめてアップロードすれば,各問題ページにPDFの問題が配置された設問ができるというわけです。

余談

実は途中で,HTMLで下線部問題できないのか?と思って生成AIに聞いてみたこともありましたが,結果としてはやはりABCDをうまく表示させることができなくて失敗に終わりました。

おわりに

正直,この作業自体は絶対にやらないといけないわけではないし,むしろ何年もやらないままできたのできっとやらなくてもよかったのかもしれません。ただ,私としてはどうしてもいつもなんか引っかかるものがあって,なんとかしたいと思っていたので,今回解決できてよかったです。まだまだもっとこうしたいというのがあるので,そこにもしっかり手が回りますように…。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

jsPsychで自己ペース読み課題を作りました

はじめに

querie.meで次のような質問をいただいたのがきっかけで,この記事を書いています。ただ,今回は直接的な回答をブログ記事にしたというわけではありません。

Jspsychで自己ペース読解を作りたいと思っているのですが、なかなか良いリソースにたどり着けません。 何を参考にして作成されましたか。

https://querie.me/answer/FoiIeOGRo0FxWcSAnwvx

参考までに,私が作ったものを公開しましたというお話です。

jsPsychというJavaScriptのライブラリを使って,Webブラウザ上で実験を行うことができます。私もコロナ禍以降,オンラインでできる実験プログラムの構築を色々と模索していて,様々なものに手を出したりしたのですが,最終的にはjsPsychでいくことにしました。特に理由はないんですが,コードベースだとやっぱり細かいところに手が届くっていうのが大きいかなと思います。心理学分野だと,心理学の様々な実験のサンプルを見ることができるのですが,残念ながら言語実験はあまりサンプルがないんですよね。そこで,jsPsychで私が作った自己ペース読み課題をGitHubに公開しました。

https://github.com/tam07pb915/spr-jspsych-experiment

詳しくはこのレポジトリを見てもらえたらと思いますが,補足的なことをこのブログ記事にも書いておこうと思います。

メインの部分

自己ペース読み課題にはいろいろなバージョンがありますが,私が作ったのは単語提示・移動窓方式と呼ばれるもので,一語ずつ,左から右に読み進めるタイプのものです。以下のリンクから短いデモができます。

https://tamura-jspsych-demo.netlify.app/spr-demo.html

自己ペース読み課題のトリッキーなところは,刺激は文として作るけれども,それを単語に分割して提示するっていう部分なんですよね。その仕組みのところは,

Week 4 practical | Online Experiments for Language Scientists

というページがかなり参考になりました。これをベースに,ChatGPTやClaudeに手伝ってもらいながらカスタマイズをしたという感じです。Githubには,私が実際のデータ収集に使ったフル実験のバージョンと,上のリンク先のデモ課題の2つを載せています。フル実験の方には,単なる自己ペース読み課題だけではなく,同意取得や質問紙のページがあったりします。また,異なるリストのランダム化や,途中で休憩を挟む,プログレスバーを入れる等々の違いがあります。

基本的には,

  1. 下線のみが画面に提示される
  2. スペースキーを押すと下線の1つが単語に変わる
  3. スペースキーを押して読み進めると,読んだ単語はまた下線に戻る
  4. 最後までいくと,次の画面でTrue/Falseの理解質問が出るので,FまたはJキーで回答する
  5. 試行と試行の間には「スペースキーを押して次にいってください」みたいな文言がある

という流れで進むようになっています。フル・サンプルのどちらにも練習セクションとメインタスクセクションがあり,練習セクションでは理解質問の回答に対して,CORRECT/INCORRECTのフィードバックがあります。メインタスクセクションではフィードバックはありません。

少しコードをいじれば、任意の記号(例えば”|”)で区切られた英文をその区切りごとに例えばフレーズ単位で提示することもできると思います。

全体的なこと

Firebaseとの連携

私は実験をfirebaseと連携させて,そこにデータを蓄積するという感じでデータ収集をしています。よって,firebaseと連携するための仕組みもコードの中に入っています。ただ,firebaseをどう使うのかみたいなところはウェブ上にたくさん資料が転がっているので,それを見て自分で勉強してみてくださいという感じにすみませんが今のところはなっています。

データ分析

jsPsychで得られたデータはJSONフォーマットになっています。これはそのままではデータ分析に適していないので,JSONデータをテーブルデータに変換する必要があります。これはそこまで難しくなくて,オンライン上でフォーマットを変換してくれるサービスもありますし,今なら生成AIに頼んだら多分やってくれる(またはコードを提案してくれる)と思います。とはいっても,その部分も結構大事ではあるので,一応サンプルの出力をRで読み込んで整形する過程もRmarkdownでドキュメントにしました。下記リンクからご覧いただけます(もとの.Rmdも含めてGithubのレポジトリに入ってます)

https://tam07pb915.github.io/spr-jspsych-experiment/sample-experiment/sample-data-transformation.html

使っている刺激

フル実験のメインタスク部分は,number attractionを見るための刺激文が入っていて,私の自作です(まだ発表すらできていないデータ…)。サンプルの方は,下の論文の実験1に使われた英文の一部を使っています。

Trueswell, Tanenhaus, & Garnsey (1994) Semantic influences on parsing: Use of thematic role information in syntactic ambiguity resolution. Journal of Memory and Language, 33(3), 285-318. https://doi.org/10.1006/jmla.1994.1014

理解質問は自作です(Copilotが勝手にサジェストしたものを使いました)。

刺激はコードの中に埋め込まず,別ファイルで用意してそれを読み込むという方法もあると思います。しかしながら,今回はすべてコードの中に刺激を埋め込む形にしています。Excelファイルで一般的には実験刺激は管理されるでしょうから,そこからjsPsychで扱われる形式への変換が必要です。これもおそらくはそこまで難しいことではないと思いますが,いずれRの例を作ろうと思っています。

注意点

私が公開したコードを,様々な実験に応用しようとすると,刺激の部分を入れ替えるだけではおそらくうまく動かないと思います。というのは,読み込んだ刺激の形に応じて,記録されるデータを選択しているからです。例えば,サンプルの実験では,実験要因として主語名詞句の有生性しか入れていません。1要因の実験というわけです。よって,そのサンプルコードを使って2要因以上の実験を行おうとすると,記録されるデータに反映されない要因が出てくることになります。もちろん,事後的に復元することは可能ではありますが。そのあたり,ここをいじったらここも必ず変えてねみたいな丁寧なコメントアウトまでは残念ながらできていません。ご了承ください。汎用性を意識してどんどん機能を追加して選べるようにするみたいなのはちょっと素人の私には難しいです。

おわりに

この記事では,心理言語実験で使う自己ペース読み課題のプログラムをjsPsychで実装して、GitHubに公開しましたという記事を書きました。冒頭の質問者様の役に立ちますように。自己ペース読みよりロジックは簡単ですが,プライミング語彙性判断課題のプログラムも手元にあるので,反響があればまた公開しようと思います。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

研究をして論文にするプロセスについての質問

はじめに

2025年1本目の記事ですが,例によって最近多めのQuerie.meでいただいた質問シリーズ。

質問

あけましておめでとうございます。
文法習得に焦点を当てて研究しているSLAの学生です。何か研究をして、論文にまとめていくという作業をすることに関して、2つ質問します。
【1】研究をして論文にまとめるときに、投稿するジャーナルを決めてから研究をしていきますか。それとも、研究をして、まとめきったところで投稿するジャーナルを選びますか?
↳追加で、研究がどこまでいったら、「投稿する」というレベルだと判断していますか。
【2】投稿するジャーナルを選ぶときに、SLR、SSLA、LA、などなどいろいろな雑誌が国内誌・国際誌にあるなかで、それぞれの採択難易度や、どれに投稿するのが妥当だろうという判断はどのようにされていますか?
以上の2点です、よろしくお願いします。

回答

投稿する前にジャーナルを決めるかどうか

1については,投稿するジャーナルを決めてから研究することは今はほとんどないかなと思います。院生のときは,もう研究をスタートする時点で,これはどこの学会で発表してどこに投稿する,みたいなのを最初から決めていたと思いますね。ただ,それは院生のときはかなりバラエティに富んだ種類の本当に英語教育・応用言語学の幅広い研究に手を出していたから,というのも大きいと思います。

ただ,国内の学会誌に投稿するのでなければ締切がないはずなので,どこに出すかは別に最初に決める必要ってまったくないんじゃないかなと思います。逆に言うと,締切がある場合にはまず研究をスタートするタイミングが重要ですよね。私の経験でいうと,全国英語教育学会の紀要は10月締切だったので(今は会員ではないのでもう知らないですが),構想は前年度の春休みから練っておき,新学期スタートと同時にデータ収集,分析,そして8月にある全国大会の発表申し込みが確か5月頃だったのでそこまでになんとかざっとアブスト書ける位の状態にはする->夏に発表したら10月の投稿に向けて執筆,みたいな流れがあったと思います。

私のときは院生で国際雑誌に投稿するというのはまだまだ一般的とはとても言えない時代だったので,締切のある国内誌(=結果が基本的にはすぐに出る)である程度業績を稼ぎつつ,自信がまああるやつは国際誌にトライする,という感じだったと記憶しています。その点でいえば,これは国際誌いけるぞ,みたいなのはネタの時点(あるいは結果が出た時点)で決まっていたのかもしれません。私は院生のときに国際誌に載せたことは結局なかったのですが,就職してから出版になった研究の元は院生時代のもの,というのもいくつかあります。何回か国際誌の投稿を経験して思うことは,別に国内誌よりも国際誌のほうが難しいみたいなのはないということですね。なぜかというと,国際誌もピンキリだからです。自信がなくても,あるいは国内誌に落ちても,低めの国際誌に出したら通ることもあるので。

追加の質問の,「投稿する」レベルにあるというのをどう判断するか,ですが,それも「どこに出したいか」によるんじゃないかなと思います。例えば,心理言語学系のジャーナルだと実験1つでは基本的に載らないというところもあると聞いたことがあります。あとは,もっと内容的なことでいうと,「一本の論文として一応のストーリーはできるか」が大事かなと思います。仮に結果が自分の予測していたとおりにならかなったとしても(私の場合はほとんど予測通りになったことがない),それを解釈して一応のストーリーになっていれば論文にはなるし,論文になる=投稿するレベルにある,ということだと私は思っています。

ジャーナル選びの採択難易度など

この質問者さんがもし仮に名大の方だったら,門外不出の通称「ソルジャー・マニュアル」という文章があるので,先輩に聞いてファイルもらってください。その中に「国内の主な論文投稿先リスト」というのがあって,そこに作成者の独断と偏見で判定した難しさランキングがあります。

投稿先を選ぶときに気にするのは,難易度もそうですけど,そのジャーナルのスコープじゃないでしょうか。例えば,教育に関係があるなら言語教育系の学会誌や教育系の雑誌に出すというようなことです。例えば,国内の学会でいえば,テストが関係するなら日本言語テスト学会のJLTA Journalに出すとか,コーパスが関係するなら英語コーパス学会のEnglish Corpus Linguisticsに出すとか。

横ではなく縦でみると,まずは学会誌の中でも外国語教育メディア学会(LET)や全国英語教育学会(JASELE),大学英語教育学会(JACET)は支部や地区学会の学会誌もありますよね。全国誌よりも地方誌のほうが「基本的には通す」という編集方針でやっていると思うので,よっぽどひどいものでなければ採択はされるはずです。こういう学会に所属しているなら,学部生・院生で手始めに出してみる,というのはありだと思います。研究成果をコミュニティに広く受け入れてもらいたいと思うと,地方誌に出しても…っていうところはあると思いますが,今はほとんどの地方誌がオンラインで公開されていると思うし,昔のように紙媒体だけで出版されていたときよりは引っかかりやすくなっているんじゃないでしょうか。あとは,単に自分の名前を宣伝する意味でも,もし仮に国内で大学に就職することを最終的に目指すのなら学会活動に積極的に貢献して名前覚えてもらって悪いことは一個もないとも思います。別にそれが主目的で論文書くことを推奨しているわけではないですが,学会ってそういうところもあると思うので。ちょっと脱線ですけど,名前覚えてもらうってことでいうととにかく自分のwebsite作る,researchmap登録するとかして,名前で検索されたときにその人がどんな人かがわかるようにするというのが超絶大事だっていうのは言っておきたいです。私も院生時代から自分のウェブサイト作ってました。

国際誌はもう純粋に教育系かそうじゃないかで結構分かれるような気がします。言語学系の研究ならLTRとかSystem出すのはちょっと違うかなみたいな。たぶん一般的によく言われることですが,「自分の研究と似たような研究がよく載っているところを選ぶ」と言い換えられるかもしれません。SLR,SSLA,LA(と略される雑誌はLanguage AwarenessとLanguage Acquisitionがありますが,この並びてきに後者ですかね)と並んだら,そりゃやっぱりSSLAから出すんじゃないでしょうか(私は何回か出してますが落ちたことしかないです)。そういうこと言えるのも,私が任期のない職についていて,業績競争の渦中にいないからかもしれませんけど,基本的には上からどんどん出していって,どっかで引っかかれば,っていう感じで私はやりますかね。とはいえ,例えばLLからスタートするような研究だと,「まあ通りはしないだろうけどフィードバックは仮にdesk rejectでもエディターからでももらえるし無料だしいっか」くらいの感じでやってます。SLRに通ったやつは,BLC(desk reject) -> LL (desk reject) -> SLR (major -> major -> minor -> accept)って感じでした。いやLLから出してないやんけってなりそうですが,私は初めて投稿した国際誌がBLCだったので,なんか思い入れがあってBLCに出したのですが,ダメで,「ほんならもうLLいっとけー!」ってなってLL出してダメだったって感じです。

私も国際雑誌投稿の経験がそこまであるわけではないですが,レベルが高くない雑誌のほうが通りやすいかというとそうでもないということは多分あって,そういうことを言われたこともあります。実際に,2019年にApplied Psycholinguisticsに出版された論文はそこよりもSJRのランキングでいうと下のところに出してリジェクトされたあとにApplied Psycholinguisticsに出して採択されました(最初に出したのはBLC)。

あとは原稿のタイプや語数なども考慮する要因に入るかなと思います。実験研究ならどのジャーナルでも基本的には受け付けていると思いますが,Opinion Paperみたいなやつは,その原稿の種類を受け付けているジャーナルとそうではないジャーナルがあると思います。今だと追試研究というセクションがあるかどうかというのもあるかもしれません。例えば,SSLAにはCtirical Commentaryというセクションがあり,語数はマックスで6000語です。

Critical Commentary. These manuscripts are shorter essays (i.e., non-empirical) motivated by current theory and issues in second and subsequent language acquisition or heritage language acquisition, including methodological issues in research design and issues related to the context of learning. Maximum length is 6,000 words all-inclusive (i.e., abstract, text, tables, figures, references, notes, and appendices intended for publication).

https://www.cambridge.org/core/journals/studies-in-second-language-acquisition/information/author-instructions/preparing-your-materials

SSLAのCritical Commentaryに相当するSLRの原稿タイプはResearch Notesだと思いますが,こちらは語数は4000語とかなり短めです。SSLAでいうResearch ReportsやReplication StudyもSLRだとこのResearch Notesに含まれると思います(下記引用)。

(b) Research Notes (4,000 words) 

Research notes are short reports and discussion papers of interest to the Second Language Research community. Research notes also include original research and follow the same outline as above but should be highly focused on one specific question related to SLA. Research notes may include replications of previously published studies.

https://journals.sagepub.com/author-instructions/SLR

Language Acquisitionにはこれらに相当する原稿タイプがあるかというと,Brief articlesになるのかもしれませんが,SSLAのCritical Commentaryのようなところに出して落ちたやつをLAのBrief Notesに出して受け入れられるかっていうとどうかなというところでしょうね。

*Brief articles must report original empirical findings, major theoretical advances, or crucial developments that warrant rapid communication to the developmental linguistics community. As in the main section of the journal, manuscripts on all areas of language acquisition are welcome and will be selected on the basis of sound argumentation, theoretical evidence, and methodological rigor. A submission to the Brief Articles section should conform to the same requirements as an article with the following exceptions: The manuscript should not exceed 15 double-spaced pages, including footnotes and references. Inclusion of experimental materials is not required in the manuscript, but it is recommended that published articles make their materials available for review on the world wide web.

https://www.tandfonline.com/action/authorSubmission?show=instructions&journalCode=hlac20#article-types

おわりに

こういう話も私がどうやって学んだかっていうと,身近なところで情報収集して(主に福田さんから聞いてた)ような気がしますね。本当なら,指導教官の先生とか,院生仲間(先輩含む)からこういう話聞ける環境だといいんでしょうね。あとは,たまに学会で会う国際誌投稿が豊富な方々からも国際誌の投稿・査読の経験の話なんかはよく聞いていたかもしれませんね。ぜひ,学会でそういう「国際誌でよく名前を見る人達」を捕まえて投稿経験を聞きましょう。もしも,いやそういう人たちに話しかけるのは恐れ多い,ということなら,誰にでもニコニコ対応してくれる福田さんに聞いてみましょう。あ,でも福田さんは英語教育系の学会にはいないからな…。そうだ,福田さんに会えるかもしれない学会が…!(子どもがいるから行けないかもしれないけど)

おあとがよろしいようで。

質問したい方はどうぞ。

https://querie.me/user/tam07pb915

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

2024年の振り返り

毎年恒例の振り返り記事です。これまでの振り返り記事も興味がお有りの方はどうぞ。

過去の振り返り記事

ブログのこと

この記事を書いている2024年12月25日時点でのこのブログのpage viewは201,463です。年間のアクセス数は18,184で,2022年に近い数字になりました。2023年で増えたのがまた少し落ちたという感じです。今年は投稿数自体がそもそも少なく,関大に就職してからもっとも少ない17本でした(就職以降だと2018年の23が最小)。

今年の記事で閲覧数が多かったのは以下のような記事でした。

1番目と4番目の話は,X(旧Twitter)で見かけたポストを発端にガーッと書いたことでした。2番目の話は研究関連の自分のメモ代わりです。3番目はQuerie.meでの質問に答えたものです。たぶん,ここ1, 2年は匿名の質問への答えをブログ記事にする,というのがかなり多いと思います。書きたいことがないわけではないのですが,ブログの記事にするっていうのも結構なdriveが必要ですからねぇ。とはいえ,今年はそれよりもプライベートでの大変化(後述)の影響だと思います。

仕事のこと

2024年は仕事面での大きな変化といえば,休業したことですね(後述)。あとは,10月から学部・研究科の執行部に入ったこともかなり大きな変化かなと思います。休業のことはプライベートなので後述するとして,執行部の話は,個人的にはいつか来るとは思っていましたが思っていたより早かったかなという感じです。いつか来ると思っていたというのは,自分がそこに入るくらい仕事ができるとかそういう意味ではまったくありません。単純に学部執行部を固定された人たちだけで回していることは健全ではないので流動化するのかなと思っていたのと,私もゆうて今年で着年して7年目ですから,もう中堅といっていいくらいのキャリアなので。正直,今執行部会や全学の会議(今までも全学の会議に出たことはもちろんありますが)に出ていると戸惑うことが多く,まだまだ全然仕事に慣れていないし勝手がわかっていないこともたくさんあって凹むこともあります。

ただ,学部や研究科をどういう方向に進めていくのか,という舵取りの一端を自分が担っているという実感は強くあって,そこにコミットできるというのは仕事としてのやりがいはとても感じます。もちろん,毎週会議があるうえに執行部会は長丁場(それでも昔よりは教授会も執行部会もだいぶスリム化されていると思いますが)なのは大変だなと思いますが。任期は2年ですが,2期は確実にやることになるので,執行部2期終わったあとに自分がどんな見方で学部や研究科のことを見ているのか,というのは少し楽しみな気持ちもあります。

授業に関していうと,また今年新しい科目を担当することになりました。それが自分が今までに経験したことのない学部の講義科目でした。これが本当に,今までで一番しんどいなと思ってここまでやっています。心理言語学研究という科目なんですが,そもそも自分は心理言語学ど真ん中の研究者ではないので,とにかく圧倒的に知識量が足りないんですよね。自分でゼロから教科書となるような授業資料を書き上げるような知識は当然ないし,「体系的な」知識がないんです。心理言語学という授業を自分が取ったことないから当たり前なんですけど。「第二言語習得」の授業ですら,体系的な授業を構築しようと思えばまあまあな準備が必要なわけですが(どういう「第二言語習得」の授業をやるかにもよりますが),心理言語学となるともうとにかく毎週必死で,金曜は大学院の第二言語習得の授業(これも今期から初めて担当)の授業もあるので昼飯食う暇もなく,授業行く前には緊張で吐きそうになりながらやっています(それでも色々追いついていなくて学生には本当に土下座して謝りたいです)。

講義科目って担当してみたいなっていう憧れやっぱりあるじゃないですか。それがやっぱり自分の研究にもつながりますし。ただ,普通の英語の授業を同じコマ数やるほうが10倍楽だなと今は思います。いやこれもどういう授業やるかにも依存するとは思います。私は今はとにかくガッツリ90分講義する感じでやっていますが,これが例えば内容は半分にしてグループ・ワークみたいなのをもう半分にする,とかしたらもう少し自分の負担は減るかなと思います。

大学院の授業も,いわゆる「王道SLA」(インプット仮説,アウトプット仮説とかが出てくるような)だったら,そんなに難しくないと思うんですよね。ただ,私はあえて,言語学系SLAのテキストを採用して,それを毎週1章ずつ読み進めるということにしました。私は文法習得系のSLA研究者ですし,学部で統語論のゼミや授業をとっていたのである程度言語学の基礎的な知識はあります。文法現象をターゲットにした習得研究とかもわかるのですが,それでもたぶん普通の王道SLAよりは準備が大変で,なおかつ学生も言語学の基礎的な部分のサポートも必要(これが全然足りてないことを大反省しているので来年度はもっと手厚く言語学部分の資料を用意する予定)なので,そこが大変です。自分で選んでそうしたとはいえ,授業の持っていき方も含めて毎週かなり苦労しています。

運動習慣と健康面

2024年は休業(後述)の影響で運動習慣は途絶えてしまいました。7月末にコロナに感染して1週間ダウンしていたり,腰がやばくなって整骨院で針を打ったりもしましたし,ちょっとよくない年だったと思います。秋学期に職場復帰してからは自転車も筋トレもゆるく続けてはいますが,ここ数年の強度は保てていないなと思います。特に,復帰後はそもそも仕事にもう一度身体を慣らすだけでなく,新しい講義科目2つの準備が本当に大変で,筋トレを短時間でもいいからやるっていう心の余裕がほとんどなかったです。今までは授業全部終わって帰り際に筋トレをしていたのですが,授業終わりは毎日ダッシュで帰らないといけなかったというのもあるかもしれません。

プライベートのこと

はい,先程から後述後述と何度も書きましたが,5月に息子が生まれました。これが2024年の一番大きな出来事で,それに伴って育児休業を取得しました。それで,仕事面でも大きな変化がありました。

子どもが生まれたときのことや育児休業についてはnoteに記事を書いたのでそちらをお読みください。

子どもが産まれました

育休を取ると決めたこと

育休の振り返り(1)

育休の振り返り(2)

育休の振り返り(3)

育休の振り返り(4)

子どもができたことは,とにかく自分に「愛」とか「愛しさ」みたいなことを教えてくれたなと思います。そういう気持ちを感じたことがないとか,家族や妻にそういう感情がないということではなくて,親から子への愛情ってこんなものなんだ,ということを毎日感じています。なんていうか,本当に子どもの存在って尊くて,愛しくて,たまらないんですよね。大変なこともめちゃくちゃいっぱいあるんですが,それが全部チャラになってさらにお釣りどころか逆に儲かっちゃうくらいのプラスがあるなと思います。どんだけへとへとで帰ってきても,息子の笑顔を見たら全部吹っ飛びます。

もう一つのプライベートの大きな出来事は,父方の祖母が9月に亡くなったことです。父方の祖母は私が育った実家の近くに住んでいたので幼い頃からお世話になっていますし,大人になってからも父が祖母の面倒を見ていたので,毎年最低でも1度は食事に行っていました。それだけではなく,私が人生で本当に辛い時期に直筆の手紙を送ってくれたりと,離れて暮らしていても気にかけてもらっていました。

私は,妻が妊娠したとわかったときから,子どもが生まれたら絶対に祖母に自分の子供を見せて,一緒に写真を撮りたいとずっと思っていました。写真館でプロに,家族写真を撮ってもらうのが夢だったのです。息子は5月生まれで,夏休みに東京に行って祖母に会おうと思っていたのですが,夏の暑さだったり,乳児を連れての移動の大変さだったりということもあって,東京に会いに行くことは結局できませんでした。テレビ電話をつないで,画面越しで息子を見てもらって,話をすることはできました。祖母は画面越しでもひ孫の顔がよく見えていたようで,「話をちゃんと聞いているね」などと話しかけていました。父は,100歳まで生きると思うと言っていました。そのほんの数週間後に,祖母の体調が急変したという連絡を父から受け,急いで息子と妻と3人で東京に行きましたが,コロナに感染していたことから隔離されていて,私の妻と息子は結局祖母に会うことができませんでした。私が姉と父といっしょに,防護服を着て祖母に面会したときにはすでに脈も弱くて会話もできておらず,口を動かすことが精一杯という状況でした。私はそのときただ一人号泣して「○○くんとおばあちゃんといっしょに写真を取るのが夢だったのに」と言いました。その日の夜に祖母は亡くなりました。今でも後悔していますが,祖母のお葬式には息子にも立ち会ってもらい,一緒にお別れをしました。この時(葬式は亡くなってから何日か後だったので,一旦大阪に戻ってもう一度東京に行ったので2回の大阪-東京旅行)が子連れで旅行に行った初めてのタイミングだったのですが,子連れの旅行は本当に疲労感がぜんぜん違うということもその時にはじめて知りました。急なことだったにも関わらず,一緒についてきてくれた妻にも本当に感謝しています。話は逸れましたが,祖母が亡くなったことは私の中でも結構気持ちが落ち込む出来事でした。

買ってよかったもの

最後におまけ。

LOWYA 着る毛布 GROONY グルーニー

パネルヒーター 北国のこたつ

この2つは寒い時期の必須アイテムになりました。着る毛布は多分色んなところで出していると思うのですが,商品の比較とかはできません。私は妻におすすめされたものを買いました。とにかくこれ着るだけで全然違いますね。夜お風呂上がりから寝るまでと,朝起きてから着替えるまでは基本的に着ています。

パネルヒーターは,研究室にはあるのですが自宅の書斎にはなくて,新しく自宅の書斎に導入したのですが,3面ではなく上下にもパネルがあるタイプにしました。これだと,靴を脱ぐような環境だと最適ですね。研究室にも置こうかと思いますが,基本的に靴(スリッパ)を履いているので,その着脱をするのが少しめんどくさいかなと思っています。ただ,やっぱり包みこまれる感じがあるので,膝下まで全体的に温かくて気に入っています。

昨年はまるでこたつソックスがよかったので,あったかグッズを求めているのかもしれません。

おわりに

2024年は,子どもが生まれたこともあって飲み会や学会で多くの方とお話するという機会もめっきり少なくなってしまい,とくに育休中なんかはX(旧Twitter)に流れてくる同僚先生たちの飲み会写真を見て少し悲しい気持ちになったこともありました。でも,今はそういう時期だと割り切ることもできていますし,会えないからといってお世話になっていないわけでもないし,大事にされていないわけでもないことは自分も実感できているので,そういう気持ちでいれることも幸せな環境に入れているんだなと思います。公私ともに,たくさんの方にお世話になりました。直接お会いできた方も,できなかった方も,本当にありがとうございました。

毎年の事になりますが,このブログを読んでいただいている方も,そうでいない方にも,私に関わるすべての方に感謝申し上げます。

今年も1年お世話になりました。来年もよろしくお願いします。皆様,良いお年をお迎えください。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

専門書についても通読した方がよいですか

はじめに

Querie.meでいただいた質問シリーズ。

質問

修論をやっていて、論文はともかく専門書については、関係するチャプターだけ読むとか、関係するところをindexからさかのぼって読む、ということは多くやっています。他方で、専門書についても通読した方がよいのかな、と思うことも多くあります。何をうかがいたいかというと、①通読はどれぐらいするべきか、②通読する機会はどうやって確保しているか、③最後まで読むためのノウハウ的なものを教えていただければ幸いです。

回答

これ,矢野さんにも全く同じ質問されてましたよね…?矢野さんの回答でご自身の満足する回答を得られなかったために私にも質問されていると思いますが,さすがに質問丸コピはわざわざ答えてくださった矢野さんにも失礼ではないかと思いました(もちろん,丸コピの質問を横流しされた私もいい気はしないです)。

よって,この質問には答えるかどうかめちゃくちゃ迷ったのですが,ブログで答えることにします。普段こんなこと絶対言わないですが,この手間をかけて質問に答えることに色々思いを馳せてくださいね。

「専門書」の認識が一致しているか

まず,専門書って言ったときに,何を想像するのかっていうのは一義的に決まらない気もするので,そこから。論文との対比なので,論文以外の書物が専門書に含まれるのかな,と最初に解釈しました。そうなると,いわゆる分野をざっくり概観するような書籍,例えば私の分野であれば,Second Langauge Acquisitionがタイトルに含まれていて,大学の授業のテキストにも採用されそうな第二言語習得をある程度網羅的にさらっているような書物も含まれそうだなと思ったのです。もちろん,そういった書籍の中にもかなり入門向けのものなから,割と歯ごたえのあるものまで多少の幅はあると思います。

もし仮に,そういう分野を概観するようなものも質問者の方の「専門書」に含まれるとしたら,次のセクションをお読みください。そうではなくて,もっとトピックを限定して,そのトピックだけをかなり掘り下げて書いているような書物のことを「専門書」と呼んで質問しているなら次のセクションはスキップしてもらって構いません。

概論書は何冊でも読んでいい

ガチガチの専門書ではなく,ある程度ライト層(大学院生や学部生)も読者層として考えられているような,いわゆる入門書レベルの本(とは言っても新書とか一般書ではなく)であれば何冊でも読んだ方がいいと思います。

というのは,論文何本読んでもその分野の全体像が見えて来ないので,自分のやってる研究が全体のどこに位置していて,全体で解決すべき問題のうちのどの部分を扱っているのは論文を読んでいるだけでは把握できません。学術論文であれば,そんな広いところがイントロのスタート地点にはならないでしょうけど,学位論文になったらある程度広いところからスタートすると思うんですよね。その方がディスカッションも広がると思うし(ここは議論分かれそうですが)。なんでその研究が大事なの?とか,その研究の意義とかっていうのは,私は俯瞰的な視点からも考えられるべきだと思っています。よって,特に研究を始めて間もない頃ほど入門書読み漁るのがいいと思います。

専門書を読むかどうか

いや,入門書じゃなくて,もっと扱ってるトピックが狭い専門書のことです,ということであれば,その専門書がどんなものなのかとか,なんの目的でその本を読むのか,みたいなところも関係するかなと思います。どの分野の修士課程やられているかわからないので,例えにしっかりきてもらえるかわからないのですが、私の例でいいますね。

私は修士論文が意識高揚タスクと呼ばれる類のタスクを行うことにより、目標言語項目への「気づき」が促されるのかというものでした。このとき、意識高揚タスクが自分のフォーカスだからといって、例えばもっと大きな枠組みのTask-based Language Teachingの専門書を通読したことがない、というのはちょっと心許ない感じがしますよね。Ellis (2003)くらい読んでるだろう普通みたいな。この領域の研究をするなら,これは誰しもが読んでいるだろうみたいな専門書って割とある気がするんですよね。スピーキングの研究やってるならLeveltは絶対に読んでいるはずとか,Lingua Franceの研究やっているならJenkinsは読んでいるはずとか。とくに,複数著者がチャプターを書いているcollectionぽいものではなくて,単著または共著で一冊の本を書いているタイプのやつです。チャプターごとに著者が異なるやつだと,割とチャプターごとに話が変わるので,チャプターつまみ食い的な読み方でもいいのかなとは思うのですが。自分の領域の論文を読んでいて,多くの論文で引用されるような文献が書籍であったら,それは読んだほうがいい専門書だという気がしています。

②通読する機会はどうやって確保しているか

私自身を振り返ると,やっぱり授業のテキストとして指定されているから読むとか,研究会で輪読するから読む,が多かったかもしれません。修士課程のときは読むことしかやることがなかったというかとにかく暇さえあれば図書館に行って読むという日々だったので自分のど真ん中ではない本も読んでいたと思いますが(それこそ言語政策の本とか)。D1の時でもM生の人たちと一緒に授業とってテキストに指定された本を通読していましたし,同じSLAの授業でも別の先生が担当している授業を複数取ったりしていました(今考えると,そんな贅沢な環境にいた,とも言えますね)。

あとは矢野さんもおっしゃっていたように,仲間を誘って読書会開くのもありだし,すでに開催されている読書会に参加するのもありでしょう。指導教員の先生にそういった会の開催を相談してみるのもありなんじゃないかと思います。私がもし自分のゼミ生にそういう相談をされたら自分が忙しくてもやろうやろうってなると思います(ゼミ生を持つことが今後あればの話ですが)。

③最後まで読むためのノウハウ

これを聞くということは,ノウハウがなければ通読はできないっていうことなんでしょうかね。正直,それは知的体力みたいなものかなと思うのでなかなか難しいですね。研究者を目指していなかったとしても,本を通読する知的体力がない人よりは絶対にある人のほうが今後の人生にその力が活かせるでしょうし,それを養うのも大学院という場所かなという気もしています。

通読できないのはなんでその本を読むのかという目的がはっきりしないという可能性もありますので,その本を読むのはなぜなのか,どういうことを理解するために必要なのかを最初に明確にしてから読み始めることも有効かもしれません。

あとは,私はブログ書くというアウトプットを目指して論文や本を読んでいた時期もありました(今はちゃうんかい)。レビューのようなレベルまで行ってたわけではなくて,単なる読書感想文止まりの拙い文章でしたけど。アウトプットするために読もうとなると,自分の理解も必然的に深まりますしね。これは単なるアウトプットではなくて,誰かに見られる文章を書くというのがポイントです。自分しか見ないのであれば適当になってしまいますから。それに,業績にはならなくても自分が何からの本を読んでその概要や考えたことをまとめたものというのは,公開したら絶対に誰かに読まれてどこかで誰かの役に立つことがあると私は思っています。

おわりに

質問者の方の知りたいことにストレートに答えられているかはわかりませんが,私からの回答は以上です。修論頑張ってください。

質問したい方はどうぞ。

https://querie.me/user/tam07pb915

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

文法項目別に配列されたインフォメーションギャップ活動が載っている本知りませんかという質問(回答:知りません)

はじめに

Querie.meでいただいた質問シリーズ。回答遅くなってすみません。

質問

中学校・高校の英文法指導で、インフォメーションギャップのある活動を行いたいのですが、文法項目別にそういったアクティビティが配列されているものはご存じでしょうか? 日本語で書かれたもの、英語で書かれたものどちらもご存じでしたら教えてください。 先生が執筆されたテキストも熟読のうえ使わせていただいているのですが、タスク型(文法対応にはなっていない)ところ、まだ私は使いこなすことができていません、、、。 お手数ですが、ご回答いただければ幸いです。

回答

一言でいうと,知らないです。本屋さんに行くのが一番いいと思います。

ただ,それだけだとすごく冷たい感じになるのでもう少し。

まず,そのインフォメーションギャップのある活動をなんの目的でやろうとしてるのか考えてみてほしいです。インフォメーション・ギャップがあることをなぜ求めているのか,という点も含めて。文法指導の一貫なのはそう書かれていらっしゃるので自明として,文法知識のどの側面を学習者に学んでもらいたいのか,あるいはどういうスキルを伸ばしたいのか,というか。どの文法項目についても一律に同じようにインフォメーション・ギャップ活動を仕掛けて,特定の項目を学習者の口から頻発させたいという欲望が感じられると(質問者の方がそうだとは断言しませんが),私としてはめちゃくちゃ違和感あるんですよね。文法ってそういうものだったっけ?というか。どういうシチュエーションでどの文法を使うのか,ということを考えさせること(その逆も然り)だって,何回も口から出すことと同じかあるいはターゲットの文法によってはそれ以上に大事なはずなんですけどね。とか言っていると,亘理先生がやってきそうです。そうだ,亘理先生の文法(指導)関係の記事もぜひ読んでみてもらいたいです(最近はあんまり文法指導だけをテーマにした記事はないかもですが)。私なんかよりも圧倒的に文法指導に見識があると思います(もしかすると御本人はそういう英語教育寄りのところから今後の研究者としてのキャリアの軸足を移そうとなさっているところもあるかもしれませんが)。

文法の練習させる活動って,その文法自体の何を練習させたいのか,意味・形式・機能のどこにフォーカスさせるかも関係している話ですし,正確さに焦点をあてたいのか,あるいは流暢さに焦点を当てたいのか,という選択肢も活動の選択には関係してくるでしょう。そういう意味では,文法それ自体への理解を深める意味も込めて、The Grammar Bookを読んで、章末のアクティビティから着想を得て(そのままやるということではなく,そこをヒントにするということです),活動を設計する,というのもありかもしれません。

私自身は,もちろん環境もありますけど,なんらかの文法をターゲットにして活動しようというニーズがないので,文法項目別に並んでいる本のことはわからないです(教材集めが趣味でもないし,最近は特に英語指導に関する実践的な興味は昔より薄いです)。昔は高島先生の本とかありましたけどね(あそこに掲載されてるやつが全部面白いかは別ですが)。私が持っているいわゆるアクティビティ集(Activities for Task-Based Learning, Discussions and more, New ways in teaching speaking)を見てみても,文法項目別になっているものはありませんでした。『コミュニケーション・タスクのアイデアとマテリアル』がそうしているように,targetになりうる文法項目が書いてある,という例はありましたけど。『コミュニケーション・タスクのアイデアとマテリアル』は,書名やまえがき(本書の背景と構成,活用方法),第1部から明らかなように,「タスク」を提供しているわけで,文法指導のアクティビティ集ではありません。ただ,それぞれのタスクに「言語表現」というセクションがあり,このタスクをやるとこういう言語表現の表出が見込まれる,という記述はしてあります。その部分をp.258以降で逆引きできるようにもしています。ただし,その言語表現を使わないと絶対に課題が達成できないというものではありません。そういう課題をやることは,コミュニケーション活動を通して文法学習(指導)をすることにはならないのか,というところは意見が分かれるところかとは思いますが,私は,そういう課題を通してでも文法の学習・指導は可能だし,何ならコミュニケーション活動と文法指導を完全に分離してモジュール型のカリキュラムにしたっていいとすら思っています。

私としては,ある特定の文法(そして多くの場合その特定の文法項目は一つ)が頻出するような課題は実際のコミュニケーションとは乖離が生じる可能性が高いと考えています。というか,そのパターンで全部の文法項目の指導ができると思わないほうがいいというか,そういう発想の転換が求められるというのは間違いないと思います。

あとは,anfieldroad先生のブログを調べて探してそこからアイデアを得るというのもありうると思います。個人的には,anfieldroad先生のNewsletterに登録して文法指導関係のコンテンツを片っ端からインプットすることもおすすめしたいです。文法ターゲットにした活動って基本つまらなくなりがちなイメージがあって,変にコミュニケーション活動「らしさ」求めると特にそうなりがちなんですが,anf先生の活動は面白いなぁというのがやっぱり多いですよね。なにより,anf先生自身が「文法の練習」を面白くしたい,という狙いで構想しているのが良いです。

おわりに

あまり有益な回答できなくてすみません。

質問したい方はどうぞ。

https://querie.me/user/tam07pb915

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

学会事務局仕事をちょっと楽に

はじめに

最近,Claudeに「学会事務局業務」というプロジェクトを作って,いろいろな業務を助けてもらっています。Claudeはプロジェクトという単位でチャットをまとめてくれて,そのプロジェクトに特有の指示や情報を与えられるので重宝しています。

よくやっているのは,

  • メールの返信文面を考えてもらう
  • 生HTMLで構築されたウェブサイトのページを更新する(コピーして新しく作り直す作業も含む)
  • ページの英語版を作る(<-半ば勝手にやってる)

一番最後の英語版については,役員表の英語版を作るのが地味に面倒で億劫だったのですが,日本語ページのソースコードを渡したら9割くらいはできていました。所属先の英語名もほぼあっていて,漢字の読み方がちょっと違うくらいでそこは手作業で修正しました(もしかすると間違っているところがあるかもですが)。今回は,「メールテンプレにcsvからの情報を流し込む」という話。

メールテンプレにcsvからの情報を流し込む

私は学会事務局で,学会発表の申し込み後,審査を経て結果を応募者にメールで通知する際に,今まではメールのテンプレだけは作っていました。そのテンプレに応募情報や審査員のコメントなどの情報ちまちまコピペしてメール送る,というようにやっていたんですね。別に件数もそんなに多くないので手作業でもまあいいかみたいな。

ふと,Claudeにこういう作業って楽にならないんですかね?と相談してみたところ,Pythonのコードを作ってくれました。私はPythonは触ったことはあるのですが,自分で実用レベルでは使いこなせないので,Pythonコードを動かすのはちょっとハードルが高いと思っていました。しかし,Claudeはコードの実行まではできません。そこでChatGPTにPythonコードの実行をお願いしたところ,ほとんど私が求めているような形で,申込情報と審査コメントの入ったcsvファイルから自動的にメールを作成してくれました。いやーこれは助かります。多少の微修正は必要でしたが,これまでの作業よりは圧倒的に楽だと感じました。使い回せるし,他の同じようなメール作成にも転用できそうな気がしています。もっと早くやってたらよかったなと今更ながら思っています。

おわりに

なんとなく,こういうことも書いておこうかなと思ったので書きました。

なにをゆう たむらゆう。
おしまい。

乳幼児3人子育てしていてなかなか研究が進められないというご相談

はじめに

Querie.meでいただいた質問への回答シリーズです。長文の回答ではないですが,なんとなくブログに残しておきたいなと思ったのでこちらに書きます。

質問

はじめまして。私は4年前に英語教育の修士号を取得し現在4コマの大学非常勤をしている30代です。乳幼児3人子育てをしており、なかなか研究を進められません。今後、任期付きの仕事か博士後期に進むのか将来分かりませんが、いずれにせよどのように研究を続ければよいかアドバイスいただきたいです。今は大学紀要論文をなんとか書き進めてるところです。

回答

質問ありがとうございます。乳幼児3人の子育てに加えて非常勤4コマ担当されているなんて,それだけで尊敬に値します。私は育児休暇を取得して,仕事量を大幅にセーブしたうえで(継続している研究プロジェクトや学会業務はほそぼそとやっていたのでゼロにはなっていませんでしたが)子ども一人育てるのだけで精一杯ですから。

質問者の方は子育てと非常勤に加えてさらに論文も書かれているなんて,それだけで研究やってる人だと私は思いますよ。国際ジャーナル,学会紀要,大学紀要など媒体は関係なく,亀の歩みでもやり続けること,書き続けること,それ以外に研究を続ける方法はないかなと私は思っています。私も就職してから常に研究ができていないという悩みを抱えながらここまでやってきています。自分は超人ではないし,人と比べて何かに優れているわけでもないし,それでもやっていくためには,とにかく「やめないこと」それしかないなという気持ちでいます。大学院博士後期課程時代に,私の先輩はこんなことを言っていました。

研究者は自分で自分を「書けないタイプ」とみなしたら終わり

せいぜい「たくさんは書けないタイプなだけ」とか「今はまだ書けないだけ」と思うこと

このことは折に触れて思い出すようにしています。

書く,ということに関していうと,書きかけのなにかがあるならとにかく毎日そのファイルを開いて目にいれる,ということを意識しています。あとは,文献を読んでいなかったら論文を書くどころか研究のアイデアすらも浮かばないと私は感じているので,やばいなぁと思ったらとにかく読むことですよね。また,学会に行くのも自分の思考が刺激されてアイデアが浮かぶことがよくあります。そうやって,ほそぼそとでも続けていくしかないなというのが今私自身が思っていることです。子育てしながらだと,自分の時間もなかなか取れないし,決まった時間に何かをしようとしてもそれが継続して習慣的にできるようにはなかなかならないですもんね。この部分に関しては私もまだ自分の中で最適解のようなものは見つけられていません。むしろ,私のほうが3人のお子さんを育てながらどうやって論文書く時間を作っていますか?とお伺いしたいくらいです。

最後に,もし博士後期への進学を検討されているのなら、ぜひ関西大学外国語教育学研究科も候補にしていただけたら嬉しいです(宣伝)。事前の申請は必要ですが,リモート履修制度というのもありますので,遠隔地から授業を履修して課程を修了できます。

https://www.kansai-u.ac.jp/fl/graduate/

おわりに

一緒に頑張りましょう。

質問したい方はどうぞ。Xのフォロワーが1000人超えたので有料質問も受け付けられるようになったのでその選択肢も出してますが,無料でも全然答えます。有料になったら気合いがもっと入ると思いますけど。

https://querie.me/user/tam07pb915

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

Obsidianで「やったことリスト」をつくる

はじめに

私は何年か前から,「やることリスト」や「To Do List」ではなくて,「やったことリスト」をつけるようにしています。

ToDo(やること)リストじゃなくてDone(やったこと)リストをつけよう

2つの記事のうち下のものは10年以上も前に書かれているので,アイデアとして何か目新しいわけではありません。なんでそれやるの?みたいな話の詳細は上の2つの記事をお読みください。私はとにかく,「なにかやった」ということを日々積み重ねていってそれを可視化したい,というのが大きいです。「いや〜今日は何もできなかった」という日でも,ノートを書くために一日を振り返ってみたら,「仕事をしないぞ。休むぞ。」と決めた日以外には絶対に何かやってるんですよね。「あ,何もやってないと思ったけどなんかやってたわ。」と(自己肯定感下がらない)。「てか意外に結構やってない?」と思う日もありますし。一日にやってる仕事の数が多すぎて,こんなリスト書いてる時間がもったいないよと思っちゃう人もいると思いますけど,そういう人は別にこんなことしなくても自己肯定感下がったりしないと思うし必要のないことなので,関係のない話かなと思います。私みたいに,「ああ,私は仕事のできないダメ人間だ」という気持ち(になったりすることがある)人の参考になる可能性があるかもしれないということでこの記事を書いています。ぜひ試してみてください。

さて,この記事では,Obisidanを使って「やったことリスト」を実現する方法を紹介します。

以前はEvernoteでやっていた

リストをObsidianに移行する前は,Evernoteに一つの「やったことリスト」というノートを作って,そこに毎日日付の見出しを作ってからチェックボックスで消していく(あえてチェックボックスにするのが個人的には重要)というようにしていました。このノートはホーム画面にピン留めしておいて,Evernoteを開けば常に見れるようにしていたというわけです。

Evernoteは値上げをどんどんしていて,Evernote離れしている人も増えていますが,私個人としてはWebクリッパー(この用途では10年以上使っています)や紙関係でスキャンしたものの保存先として多用しているので,利用を辞めることはおそらく今後もないと思います。ただ,研究関係のメモをObsidianに移行してからは,Evernoteを開く機会自体が結構減ったんですよね。結果として,Evernoteを開くのが面倒だからリストを作るのも面倒で,さらには毎日日付を自分で書くのも面倒だなと思い始めてしまったのです。

日付書くの面倒問題以外でも,リストにちょっとしたメモを残したりできたら便利だなと思っていました。次はこういうふうにやり方を変えようとか,これの続きを次にやるときはこっからスタートだよとか。そういう余白みたいなのがないんですよね。一つのノートだと。となると,毎日のノートが独立していたほうがいいんです。最近Evernoteでもデイリーノートが作れるのを知ったので,Evernoteでも解消できるかもしれませんが,研究関係のものが常に目に入るようにするためにもObsidianは常時開くようになっていたので,Obsidian上でやったことリストができないかなと思い,実際にやってみたというわけです。

自分が理想としていたリストの作り方

いろんなやり方があると思いますが,私が思い描いていたのは次のような仕組みです。

  1. ワンクリックでデイリーノートを作れる
  2. デイリーノートにはテンプレとしてタスクリストがすでに記入されている
  3. 毎日のデイリーノートが「やったことリスト」という名前の別のノートに自動的にリンクされる(やったことリストからデイリーノートにジャンプできる)
  4. リンクされるのは「リスト部分」だけで,見出しが日付,その下にリスト,という見え方になる
  5. 新しいリストは常に上に追加される

おそらく,1のところはコアプラグインの起動時にデイリーノートを開くという設定をONにすれば,クリックすらせずにデイリーノートが作れると思います。ただし,私の場合は毎日の日記というよりも「仕事」メインなので,仕事をしない日にはデイリーノートを作る必要がありません。むしろそれで作ってしまうと,デイリーノートがあるのに何もやっていない日が逆に可視化されてしまって本来の目的と逆方向にいってしまうのでよくありません。そういうわけで,ワンクリックする手間を設けています。

必要なプラグイン

  • デイリーノート
  • Dataview

多分最小限でこの2つで可能なはずです。まずはプラグインをインストールしましょう。話はそれからです。

ちなみに,私はなぜかコアプラグインの”デイリーノート”ではなく,”Periodic Notes“というコミュニティプラグインを使っています。なんでそうしたのかはもはや忘れました。WeeklyとかMonthlyとかのノートも作れるので汎用性が高いからかもしれません(まだ毎週,毎月とかでノート作って書いたりしてないですけど)。あ,”Calendar“プラグインとの統合があるからかもしれませんね。カレンダービューで日付をクリックするとその日のデイリーノートに飛んでいけるみたいな。もしかしたらコアプラグインのデイリーノートでもできるのかもしれませんけど。まあそれは今回のメインの部分とはあまり関係ないので割愛します。

それから,”Dataview“これが肝です。これがあることで,日々のデイリーノートを「やったことリスト」に蓄積していくことができます。使い方はめちゃくちゃ汎用性が高くて難しいので,私はChatGPTに聞きながら使いました(もっというと,「Obsidianで,デイリーノートが自動で生成され,そこに作られたタスクビューが自動的に別のノートに蓄積されていくっていう仕組みを作りたいです。」ってChatGPTに質問して教えてもらいながらトライ・アンド・エラーを繰り返して最終的に自分が欲しかった形にたどり着きました)。

余談ですが,ChatGPTに教えてもらったときに,Tasksというプラグインをいれるように言われましたが,実際にはこのプラグイン入れなくてもこの目的で利用する分には何ら問題ありません(このプラグイン自体は便利だと思いますが)。私は締切があるようなタスク管理にはMicrosoftのToDoリストを使っているので。

手順1. テンプレファイルを作る

テンプレファイルを作って,保管庫に置いておきましょう。私は保管庫直下にDailyNote_Template.mdというファイル名で下記画像のようなテンプレファイルを作りました。そして,新しいデイリーノートは”DailyNote”というサブフォルダ内に生成されるようになっています。

同じ名前のファイルがあればそのファイルが開かれるようになっているので,同じ日に複数のファイルを生成してしまうということはありません。やったことはTasksのところに記入していって,メモ的なことはNotesに書くという感じになります。

手順2

デイリーノートが生成されるサブフォルダ内に,「やったことリスト」という名前のノートを作ります(もちろん名前はなんでもいい)。そのノート内に次のように記入してください。”DailyNote”というのはノートを引っ張ってくるフォルダの名前ですので,ご自身の環境に合わせてそこは書き換えてください。

```dataviewjs// ページごとのタスクを格納するための空のオブジェクトを初期化
let tasksByPage = {};

// "DailyNote" フォルダ内のすべてのページを取得し、作成時間の降順でソート
let pages = dv.pages('"DailyNote"')
  .sort(p => p.file.ctime, 'desc');

// 各ページを繰り返し処理し、タスクを抽出
for (let page of pages) {
  let tasks = page.file.tasks;

  // ページにタスクが含まれている場合、未完了タスクと完了タスクに分類
  if (tasks?.length > 0) {
    tasksByPage[page.file.path] = {
      page: page,
      incompleteTasks: tasks.where(t => !t.completed),
      completedTasks: tasks.where(t => t.completed)
    };
  }
}

// tasksByPage オブジェクトの各エントリを繰り返し処理してタスクを表示
for (let path in tasksByPage) {
  let { page, incompleteTasks, completedTasks } = tasksByPage[path];

  // 未完了タスクがある場合、それを表示
  if (incompleteTasks.length > 0) {
    dv.taskList(incompleteTasks, { checked: false });
  }

  // 完了タスクがある場合、それを表示
  if (completedTasks.length > 0) {
    dv.taskList(completedTasks, { checked: true });
  }
}

// タスクが見つからなかった場合、メッセージを表示
if (Object.keys(tasksByPage).length === 0) {
  dv.paragraph("No tasks found in the daily notes.");
}```

色々ChatGPTとあれこれやり取りした結果,DataviewJSというのを使うことになりました(プラグインの設定でDataviewJSが使えるようにしてください)。ぶっちゃけ,このコードに実は余剰な部分とかもあるのかもしれませんが,これで機能しているのでとりあえずいいとしています。「やったことリスト」の出力は下記画像のような見た目になります。

私が結構難儀したのは,最新のノートが上に来るように並び替えることと,見出しをファイル名だけにすることです。見出しにファイル名と日付がダブって入ってしまったりして,かなり何回もChatGPTとやり取りした記憶があります。

ちなみに,完了マークと日付が入っているのと入っていないのがありますが,完了マークと日付が入るのはTasksプラグインの仕様です。このプラグインを使うと予測変換の入力がうまくいかないというのと,項目だけ立ててチェックを忘れてしまったときに,本当はその日のうちにやったのに次の日に終わったようにチェックが入ってしまうというのがあって,他のノートのタスクリストとかでもこのプラグインなくても問題ないよな?とさっき確かめたら問題なさそうだったのでアンインストールした結果,今日の分だけ見え方が変わっています。

もうひとつちなみに,22日の次からノートがスカスカになっているのは,コロナに罹患して仕事どころではなかったからですw

何を「やったこと」に含めるか

私個人的には,研究に限らず仕事の範疇に含まれるものは結構細かいものでも含めています。メール返信とかは一度の返信で済むものだったのでそういう書き方していますが,もし何往復もするようなものだったら,「XXXについてメールでやりとり」というような書き方にしています。論文も,「ただ書いた」だけだとどんくらい書いたとかどこを書いたとかがわからないので,できるだけ具体的にするようにしています。大きなタスクの中にサブタスクがある場合は22日の例のようにインデントしています(実際には論文は書き終わっていないけれども親タスクのところもチェックするのがポイント)。論文とか研究とかはまた別にObsidianの中にまとめのTodoリストがあって,ある研究や論文に固有のノートの中のリストが#ToDo/Researchで拾ってこれるようにしていたりします。そことデイリーノートを連携できていたりはまだしないので,重複した内容をデイリーノートに書くこともあるといえばあります。ただ,そもそもこの「やったことリスト」を作って蓄積していく目的というのは,「なんかやったぞ」もっというと,「何もやってなくないぞ」というのを可視化する目的なので,厳密に「やらないといけないこと」(ToDoリスト)と一致していなくてよいと思っています。むしろ,そういうToDoリストにもぶっちゃけのぼりもしないような細々としたタスクをも可視化するののが目的なんです。

おわりに

この記事では,「やったことリスト」をObisidanのデイリーノートとDataviewを使って蓄積・可視化していくということを書きました。ChatGPTに聞けば,もっと多分いろんなカスタマイズできるんじゃないかと思いますので,詳しいことは私に聞かないでください。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。

どういうスタンスで学会と向き合うか

はじめに

たまたまTLに流れてきた下記のポストについて思ったことを書きます。この投稿をされた方に何か言いたいというよりも,この投稿を見て,学会に参加することとか学会で発表することについて考えたことを書く,というスタンスです。

私はフォローしていない(けど向こうから私はフォローはされている,という方)のポストです。私がフォローしている方が引用ポストされていたので目にしました。

上のポスト中の「外国語教育学会の大会」というのは,外国語教育メディア学会(LET)関西支部2024年度春季研究大会を指しているというのはこの方の下記のポストから明らかです。

率直に思ったこと

まあ,気持ちはわからなくないというか,自分が若い時(博士課程の院生時代とか)には,同じようなことを思っていたとしても不思議じゃないなと思います。学会に参加して,不満を持つということが自分自身なかったことが過去を振り返ってみて一度もなかったわけじゃないので,まあそういうこともあるよね〜というのが率直に思ったことです。

もう少し見方を変えてみる

とはいえ,私は2018年度からLET関西支部の運営委員に入っていて,2022年度からは事務局長をやっています。ということで,まあ「中の人」なわけですね。そういう立場からすると,最初の投稿のような評され方というのは,少し残念な気持ちになりました。ちなみに,私は現在育児休業中のため,事務局長という立場であるにもかかわらず,今回の支部研究大会には参加しませんでした(実際できなかったし,無理して参加しようともしなかった)。というわけで,実際に大会の雰囲気を自分自身がこの目で見て肌で感じて,というわけではありません。

以下,気になった点についていくつか個別に取り上げますが,通底するのは,学会にもっと主体的に参画してほしいな,ということです。学会に参加することはもちろん参加する人にとって利益があることが大前提というか,そういう場所でなければならないのはそうなんです。ただ,参加する人が自分の利益だけを考えて,学会全体として良い大会にしていこうよという主体性がまったくなかったら,それは学界(学会ではなく)としていい方向にはいかないんじゃないかなと思います。学会を運営する側,登壇する側からなにかしら知識だったり情報だったり,そうしたものを提供されることをサービスとして受け取る,そういう受け手の意識だけではなくて,一緒に学会を盛り上げる,そういうスタンスでいる人が増えてくれたら,と私は常々思っています。

気になったこと

最初に示したポストの中で,私が気になったことがいくつかあります。

「誰も質問しない講演」

質問が出ない,というのは,講演の内容の要因(難しすぎて理解されていないとか,逆に質問する隙がなさすぎて質問が出ないとか),聴衆の要因(そもそもちゃんと聞いていないとか,自分の関心領域とは離れていて背景知識に乏しいので質問ができないとか),両者の交互作用,その他にもたくさんの要因が絡まっていると思います。さらに,どの要因で「質問が出ない」という事象が発生するかを事前に予測して対策をすることは難しいでしょう。どういう人が参加するかもわからないし(基本的には会員がほとんどだとしても,会員の興味関心は多種多様です),講演者がどういう講演をどういう流れでするかは,タイトルと要旨レベルでしかわかりません。

また,個人的には誰も質問しない,ということが絶対に悪かどうかというと,そうでもなくて,大事なのはその後に何が起こるのか,だと思っています。講演者の立場の人が,自分のトークのなにかに問題があって議論を喚起できなかったのかと振り返ることも大事ですし,聴衆側は,「質問が出ないということはこの講演って簡単に質問が出るようなものでもないのか」というメッセージが暗に共有されることにもなると思います。いずれにせよ,大事なのは全員が当事者意識を持っているかどうかだと思います。全員が,自分が質問しようと思って聞いているかということですね。このポストをされた方が質問をされたかどうかわからないですけど,もしされていなかったとしたら,この方が指導を受けた先生(と私が思っている人)が日頃口癖のように言ってるように,「自戒を込めて」って付記しないと自分は「外野だ」という認識が現れてしまっているのではと思います。

「最新でもないアプリの紹介」

外国語教育メディア学会(LET)という名前のついた学会だからこそこういうコメントが出てくるのかもしれないし,私は当日の発表を見ていないので本当に何もわからないのですが,最新のツールでなければ発表してはいけないわけではないし,さらに自分にとってそれが既知の情報だったら参加したすべての人にとってもその発表は意味がないのか,っていうとそうとも限らないのではないか,とも思います。また,この方が「自分たちの発表のため」とおっしゃっていますが,その観点でいえば発表すること自体は発表者にとっての利益ともなるわけです。そういう視点にたてば,「最新でもないアプリの紹介」であったとしても,この発表者の方が発表してくれたことに対して,その人にとって発表したことが有益な経験となりうるように関わるのが聴衆としての役割なのではないかなと思います。

「今回の参加は自分達の発表のため」

発表する人のほとんどは,発表するのは自分たちのため(業績づくりのためだったり発表してコメントをもらうためだったり)と思っているとは思います。でも,この視点で臨むことが許容されるとなると,一つ前の,自分にとって得るものがないとも取れるような捉え方をしている発表(「最新でもないアプリの紹介」)も許容しないと矛盾してしまうような気がします。だって,それを聞いてくれる人たちになにかを届けたいと思うのではなく,あくまで自分たちが発表したいと思ってるだけで,発表者の利益しか考えないというわけですから。もちろん実際にはそういう意識でやってるわけではないと思いますし,これは「先輩の発言」であって投稿者がそう思っているというわけではないのでしょうけど(ただ,そういう誰かの発言を引用して「大会としてあれでよかったのか」と揶揄するのは個人的にはうーん,て感じですね)。

今回の大会は結構特殊だった

今回の大会は,Classroom tipsという他の学会ではあまりない発表枠での発表が多く,そのことがもしかすると他の学会の大会のイメージと異なるイベントになった可能性は十分にあるかなと思います。以下関連するポストをいくつか。

おわりに

正直,運営委員だけで学会を「回す」のも結構限界に来てるところあると思っています。発表してくれる人がいるだけでありがたいみたいなところもありますし,そういう人たちをdemotivateするようなスタンスよりは,そういう人たちに発表してよかったと思ってもらえるようにするには,どうしたらいいかを一緒に考えてほしいです。そして,発表してみようかなとか,学会に参加してみようかなと思う人が増えるにはどうしたらいいのか,そして,学会に参加する人たちがもっとメタ的な視点で主体的に「盛り上げよう」と思ってもらえるようにするためにはどうすればいいのか,そういったことをぜひ学会に参加する方々といっしょに考えていきたいと思っています。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。