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関西大学の院生向けキャリア関係イベントでトークしました

はじめに

関西大学キャリアセンターのイベント(主催は学内のプロジェクト)に声をかけていただき,関大の院生の方々に向けてトークをしました。

「多様な博士のキャリア」と銘打ったイベントで大学教員が呼ばれている理由はよくわかっていませんでしたが,事前の打ち合わせで,第1弾では企業に勤められている方がゲストだったということを聞いて納得しました。主に博士課程の院生さん向けのイベントで,自分の所属先の研究科の院生さんも何名か参加されていました。私の話は博士課程のうちにこういうことをやっておいたらどうですかという内容です。一緒に登壇されたおふたりの先生のお話もとても面白くて,他分野の方々の考え方やキャリアのことを聞けてとても新鮮でした。

将来を見据えて注力しておくべきこと

私のトークの話をすると,この部分が半分くらいの内容を占めています。正直,生存バイアスなので,話半分くらいで聞いてもらうのがいいかなと思って話しました。自分はこうしたほうがいいと思っているし,それが今の自分に繋がっているとは思っていますが。

得意なことの掛け算を意識

これは結構意見が分かれるかもしれません。得意なことでとがりまくれという意見もあるかもしれません。私は凡人なので,そういう生き方は無理でした。何か一本でここにいるというよりは,英語授業の実践(タスク),第二言語習得,心理言語学,統計,R,みたいな色々なことの掛け合わせで自分の強みになっているかなと思います。それぞれどれをとっても自分より知識・技術に優れた人はいるでしょうけれど,それを複数持っている人っていうと,あまりいないのかなという。アカデミアに就職するとなったら,狭い専門性しかなければ担当できる授業も限られてしまいますし,出せる公募の数も少ないでしょう。

博論にまっすぐ進むな

この話は実は先日,関学のT先生と話したことでもあります。博論に直接関係ないことは「必要ないこと」として切り捨ててしまう人がいるけど,それってどうなの,みたいな話だったと記憶しています。例として出てきたのはたしか,データ分析のために統計が必要だけど,統計を学ぶことそれ自体は直接関係ないから自分の手持ちのデータを分析するツールの使い方とその解釈だけ分かればいい,というようなことでした(たぶん)。

フルタイムの職を持ちながら博士課程をやるとなると,なりふり構わずやるしかないみたいな感じなのかもしれませんが,私としては博士課程の時って直接的に関係ないことでも全力でやるからこそその後につながるということばかりな気がしています。勉強でも研究でも,やれるものはとにかくなんでもやる,というスタンスでいる人のほうが,博論だけに集中している人よりも道が開けているように,名大時代の後輩を見ていても思います。むしろ,博士課程にいて博論の研究しかできなかったら,アカデミアで就職してから研究を続けていくことなんて到底できないのではとすら思います。どのような就職先でも,1つの研究だけをやれる環境であることなんてないわけですから。

とはいっても,あれこれ手を出した結果として博士論文がずっと書けないということになっては本末転倒であることは確かです。よって,博士論文をおろそかにしてもいいということでは決してありません。でも1年中,3年間ないしは4年間の博士後期課程の間,ずっと博士論文のことだけを考え続ける,それしか時間がない,なんてことあるのだろうかと思います。

もう一つ,博論関係のアドバイスでいうと,完璧な博士論文を目指さないということです。そもそも完璧な研究などないし,完璧な学位論文などありません。完璧を求めていたら一生終わらないし,完璧でないと博士号がもらえないわけでもありません。これは私自身が博士論文執筆中に副査の先生だった方にも言われたことです。博論はpassかfailなんだから,passしたらいいだけだと言われました。博士号を取ったあともずっと長く研究人生は続いていくわけで,そのプロセスの中で少しでも良いと思える研究ができるように頑張るということでいいと思います。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは登壇者3人にいくつか質問が投げられて順に答えるという感じでした。私が印象に残っているのは,「これからの博士に求められること」という質問でした。印象に残っている理由は,私以外の2人の先生は,社会にインパクトを与える研究ができるかどうかや社会実装ができるかどうか,という点を挙げられていたことです。私は人文科学の代表として,別に社会に自分の研究成果を直接的に還元しようと思わなくてもいいと思っていると言いました。念頭にあったのは,それを意識しすぎてなのか,そこまで言えないでしょう,もっと抑制的にならないと,というような発言してしまうことがこの分野だと散見されるという私の個人的な認識でした。ただ,じゃあ自分のやりたいことをやりたいようにやっていればいいかというとそういうわけではなくて,自分の研究が社会に直接役に立つわけではなかったら何に貢献しているのかを考えることがとても重要だと思います。以前参加した学内の科研費獲得セミナーでも,人文科学系では申請書の評価の際に社会実装・社会へのインパクトの重要度が他分野と比較して高くないという話を聞いたので,そういうのも頭にあったからこその発言ではあるなと今振り返って思います。

懇談会

社会科学,人文科学,自然科学の3つの領域から1人ずつ登壇したので,最後にそれぞれのグループに分かれてコーヒーを飲みながら懇談会がありました。私は一応人文系代表ということで、外国語教育学研究科,文学研究科,心理学研究科,東アジア文化研究科の院生さんたちと話をしました。話をするといっても,一人ひとりに今の不安とか悩みとかを聞いたり,質問をもらったりという感じでした。先の見えない不安だったり,自分が何をやりたいかわからなくなっていたり,というのが話題でした。

おわりに

もっと院生さんたちと話したり,終わった後に登壇者の先生方と話をしたかったのですが,アウェイ大阪ダービー参戦という大事な用事があったので,時間を少しすぎたところでお暇しました。すごく良いイベントだと個人的には思ったので,院生さんたちにも参加して良かったと思ってもらえていたら良いなと思います。

ちなみに大阪ダービーは0-1で敗戦したので,この記事を書くことで心を沈めています。今から反省会です。

なにをゆう たむらゆう。

おしまい。