線形混合モデル(LME)・一般化線形混合モデル(GLMM)で,変量効果をデザイン上で最も複雑なものにする最大モデルを作って,それでだめなら切片と傾きの間の相関パラメータを除いたモデルにトライする,という提案(Bates et al., 2015)をやろうとするとき,相関を除くのは”||”(double-bar syntax)なんですが,単に”|”を”||”に変えるだけじゃうまくいかないのどうすんだろうなと思っていたら解決策が見つかったぽいというお話です。
SLAの話の中にいわゆる認知的「ではない」アプローチをとる研究が一切出てこなかったのですが,というコメントが有りました。私が認知的アプローチを取る研究者を代表して今回登壇したということを浦野先生が補足してくださいました。私がまず答えたのは,社会文化理論なり複雑系理論なり,Atkinson (2011)に収録されているような「オルタナティブ・アプローチ」で言われているように,認知的アプローチでは第二言語習得はわからないのだ,大事なものを捨象しているのだ,というようなものがもし仮に真であったとしても,そのアプローチを取る人たちが,認知的メカニズムを一切仮定しない第二言語習得理論を作ることはできないし,学習者の外側の要因がどれだけ重要であったとしても何からの認知的メカニズムを考えずに第二言語習得を研究することはできないというものです。あらゆる要因をすべて考慮して,全部を包括的に説明することを目指そうとというのは個人的には失敗だと思っています。let all the flowers bloomでは無理だったということを,少なくともメカニズムの探求をするのであればそれを認めた上で(まあ最初からそう思っていた人が多いと思いますが),説明する対象を限定した上でメカニズムの探求をする必要があるだろうというのが「思考法本」の中で書いてあることでもあります。
Terai, M., Fukuta, J., & Tamura, Y. (2023). Learnability of L2 collocations and L1 influence on L2 collocational representations of Japanese learners of English. International Review of Applied Linguistics in Language Teaching. https://doi.org/10.1515/iral-2022-0234
この論文のデータはOSFで公開されているものですので,どなたでもアクセスできます。
Terai, M., Fukuta, J., & Tamura, Y. (2023, June 7). Learnability of L2 Collocations and L1 Influence on L2 Collocational Representations of Japanese Learners of English. https://doi.org/10.17605/OSF.IO/ZQE56
この研究の分析ではカテゴリカル変数は使っていないのですが,カテゴリカル変数も扱いたいなと思ったので,データは Terai et al. (2023)ですが,論文中に行っている分析とは異なる分析をする予定です。
最近はRT(not retweet but reaction time)使う分析しかしていないので,ロジスティック回帰はやっていませんが(…とまで書いて,共著でロジスティック回帰使っている研究が先日リジェクトされたことを思い出したんですが),この論文のRコードのアップデートはなかなか難しそうなので,ロジスティック回帰やってる論文が出たらそのときはおそらくRのコードとデータも当然公開すると思いますので,そちらでご勘弁ください。
L2英語学習者が英語母語話者のように効率性を重視した数の一致処理を行っているかどうかについてを検討した論文で,Tamura et al. (2021)の追研究の位置づけです。Tamura et al. (2021)では,L2英語学習者は母語話者と違って,there | is/are | a | cat | and | とandを読んだ際に,複数一致の文(e.g., there are a cat and….)の読みが早くなる傾向が見られることを明らかにしました。そして,それは”A and B”のような等位接続名詞句は常に複数であるという明示的な知識の影響である可能性を指摘しました。今回は1つ目の実験で,there is/are |a cat and a dog| behind the sofa.のようにフレーズ単位での自己ペース読み課題を行い,単語単位の呈示ではなくフレーズ全体として等位接続名詞句をどう処理しているかを調査しました。結果として,やはりL2学習者は複数の読みが早くなることが明らかになり,there構文内の等位接続詞を複数として処理していることがわかりました。2つ目の実験ではTamura et al. (2021)同様に再度単語単位呈示での自己ペース読み課題を行いました。Tamura et al. (2021)では呈示順の影響が考慮されていなかったためです。例えば,andの後ろも名詞句が後続するとは限りません(e.g., there is a pen and it is broken)し,理論的にも,数の一致を再解釈する可能性があるとすれば2つ目の名詞句を処理した際であると仮定されています。したがって,Tamura et al. (2021)でandの時点で複数の読みが早くなった原因は,実験中にthere構文内に等位接続名詞句が生起する刺激文に晒されたことで複数一致の読みを予測するようになったからかもしれないからです。2つ目の実験の結果,there | is/are | a | catの段階では複数一致で遅れがみられ,直近の一致は単数で行う効率優先の処理が行われている可能性が示唆されました。ところが,この影響は実験が進むにつれて薄れていき,逆に実験が進むにつれて2つ目の名詞の領域で複数読み条件の読解時間が早くなる傾向があることが明らかになりました。これらの結果から,直近の動詞と名詞で数の一致を完結させる効率駆動型処理はL2英語学習者にも利用可能であることが示唆されました。しかしながら,2つ目の名詞句で一致を再解釈し直す現象はL2英語学習者に特有の現象であり,この原因として実験中に等位接続名詞句が埋め込まれたthere構文のインプットを受けることによって学習者の持つ等位接続名詞句は常に複数であるという明示的な知識が活性化され,それが言語処理に影響している可能性を指摘しました。
実は,このJournal of Psycholinguistic Researchに載った論文は,国内の学会紀要で不採択となったものです。国内の査読のほうが厳しいのだなと勉強になりました。院生時代に,「落ちたら国際誌」というブログ記事を書いたことがあり,まさか自分がそういうことをする日がくるとは当時は思っていませんでした。普通,まずはチャレンジとして国際誌に論文を投稿し,不採択であったら,国際誌よりも通りやすいであろうとおそらく多くの人が思うであろう国内の学会紀要に出すと思います。その逆(国内落ちたら国際誌)は私の敬愛する福田パイセンくらいしか例を知りません(経験者の方いたらQuerie.meで教えて下さい)。ちなみに,私がブログ記事を書くきっかけになったのはある後輩の発言なのですが,その時は普通に国内誌に通ったので結果として「落ちたら国際誌」にはなりませんでした。
査読で不採択となるというのはそれ相応の理由があり,今回のケースも通らなかったことについては自分自身でも納得しています。査読のプロセスでいただいたコメントを元に加筆した部分も多くありますが,決定的な理由を改善する事はできなかったのでそこについては「ママ」で再投稿しました。Journal of Psycholinguistic Researchはそんなに査読が厳しくないので,それで通ってしまったという感じです。個人的にも,この論文がそこまで面白いとも自信があるとも思っていないですが(そういうのは一生かかっても書けないと思っています),とりあえず,出版されたこと自体についてはホッとしています。2019年にとった研究費の研究で,「成果」を必ず出さなければならず,論文がなかなか出ずに事務の方に毎年催促されていたので…。
採択後の校正からオンライン公開までのプロセスがめちゃくちゃ早くてびっくりしたのですが,Journal of Psycholinguistic Researchの論文はしょっちゅうCorrectionが出ているイメージなので,ちょっと不安もありつつ,ツイッターで共有してくださっている方も何人かいらっしゃってありがたい気持ちです。
Investigation of the Relationship Between Animacy and L2 Learners’ Acquisition of the English Plural Morpheme | SpringerLink https://t.co/r1vqMW5WlX
Tamura, Y. (2022). Investigation of the Relationship Between Animacy and L2 Learners’ Acquisition of the English Plural Morpheme | SpringerLink https://t.co/mIsZqfkxzL
こちらはオープンアクセスになっていますので,どなたでも無料でお読みいただけます。Journal of Second Language Studiesは割と新しいジャーナルですが,このジャーナルで現在の”Most Read This Month”の論文となっています。個人的にはこれはめちゃくちゃ尖っていて多くの人に読まれてほしいやつですので,上の2つの論文よりはこちらをお読みください(余談ですが偶然にも”Most Cited”は私と福田パイセンの博士課程時代の指導教官である山下先生の論文です)。
Cunnings, I. (2012). An overview of mixed-effects statistical models for second language researchers. Second Language Research, 28(3), 369–382. https://doi.org/10.1177/0267658312443651